タイの屋台で飲むビールには氷が入っている

 今僕は、バンコックから車で1時間ほどの小都市サラヤのホテルで、この原稿を書いている。スワンナプーム国際空港に着いたのは、今から4日前の午前5時半(現地時間)で、車でほぼ1時間のサラヤ・パビリオン・ホテルにチェックインしたのは午前8時。深夜に羽田を発った機内では映画を観続けてしまい、ほとんど眠っていない。旅装を解くと同時にベッドにもぐりこんで、2時間ほど仮眠をとってから洗面台で顔を洗い、バスルームの水道水を備え付けのポットに入れて沸かし、テーブルの上に置かれていたリプトンのティーバッグを入れる。朝のティータイムだ。それから出かける。外はもう灼熱の暑さだ。

 この日の夜は、映画祭スタッフや他のゲストたちと、ホテルから徒歩で10分ほどの目抜き通りに並ぶ屋台街で、タイ料理をいろいろ食べた(つまりタイに来た理由は、映画祭に招待されたから)。ビールを頼めば、グラスには当然のように大きなアイスキューブを何個も入れられる。おかわりするたびに氷が増え、ビールはどんどん薄くなる。要するにビールと溶けた氷の混合液だ。そんな夜が毎晩続いている。

 ここまでの描写を読みながら、東南アジア通の人ならば、この男は何と危険なことをしているのだと思うかもしれない。ネットで「タイ」と「水」を打ち込んで検索すれば、多くの人がホテルの水道水や屋台で供される氷(つまりこれも元は水道水だ)入り飲料について、絶対に飲むべきではないと警告している。

 屋台の氷はともかく、ポットで煮沸すれば細菌は基本的には死滅するはずだから、飲用しても問題ないのではと思うけれど、タイの水は硬水だから、やはりお腹を下すリスクはあるのかもしれない。タイに限らず東南アジア全域において、飲用水はミネラル・ウオーターに限定することが、日本からの旅行者にとっては一般的な常識であるようだ。歯磨きや洗面ですらミネラル・ウオーターを使うべきと主張しているブログもあった。