24日夜に大陪審で白人警官の不起訴が決定されてから、再びデモが発生。一部が暴徒化した Photo: AP/Aflo

8月に丸腰の黒人青年が白人警察官に射殺され、かねて警察官の過剰な権力行使にフラストレーションを抱えていた地元住民らが暴動を起こした、米中西部ミズーリ—州の町ファーガソン。地元セントルイス郡の大陪審は、事件の渦中にいる白人警察官を殺人罪等で起訴すべきかどうかの審理を8月20日に開始。3ヵ月以上続いた審理も終わり、11月24日夜に大陪審は白人警察官の起訴見送りを決定した。不起訴決定直後から、ファーガソン市内では警察署の周りに集結していたデモ隊の一部が暴徒化。市内の商店は破壊・放火され、暴動を鎮圧するために警察が発射した催涙弾も手伝って、セントルイス近郊の小さな町はまるで霧の中でいくつもの炎が上がるような異様な光景を見せた。

感謝祭を前にデモは
全米に飛び火

「このエリアでも大陪審の対応に対してデモは行われましたが、大きな問題が発生することはありませんでした。誤解を恐れずに言えば、車で20分足らずの場所で暴動が発生している現実を受け入れられないというか、まるで別の国の話に思えてしまいます。ここでは、木曜日からの感謝祭の準備の方がより大きな話題になっていますね」

 セントルイス郊外のクレイトンに住むアメリカ人女性は、暴動発生後の25日朝にそう語った。

 セントルイス周辺では高級住宅地の1つで、一家族当たりの年間収入の平均が10万ドルを超えるクレイトンは、住民の約9割が白人だ。一方、暴動が発生したファーガソンは、住民の約7割が黒人で、一家族当たりの平均収入は4万ドルほどだ。同じセントルイス郡にある町の間で、これだけの格差が存在するのもアメリカ的ではあるが、格差以上に差が出るのが治安だ。

 クレイトンの人口は約1万6000人。ファーガソンの人口が約2万1000人なので、両都市は小さな町の部類に入る。しかし、2000年から2012年の間に発生した凶悪事件の統計に目を向けると、2つの町に大きな違いが存在することが分かる。

 13年間にクレイトンで発生した殺人事件は2件、強盗事件は77件だった。それに対し、ファーガソンでは同時期に発生した殺人事件が19件で、強盗事件にいたっては510件も発生していた。犯罪発生率の高さから、ファーガソンが以前から治安の悪いエリアとして地元住民に認識されていたのも事実である。