
『週刊ダイヤモンド』9月24日号の特集は、「伝統と革新が織り成す魅惑の世界~歌舞伎への誘い」。歌舞伎が誕生して400年、松竹が興行として手掛け始めて100年余りが経過した。伝統芸能である歌舞伎を長年支え続けてきた松竹は、いかにして「興行」として成立させてきたのか。その知られざるビジネスモデルに迫る。
9月上旬。立っているだけで汗が噴き出る厳しい残暑の中、東京・銀座の歌舞伎座の前には、午後4時の開場前から、あふれんばかりの人が入り口の前に列をつくっていた。
演目を記した看板を指さしながら、目当ての俳優について楽しそうに語る50歳前後の観覧客に交じって、観光ガイドブックを片手に、記念撮影をする外国人観光客の姿も目立つ──。
2013年4月に再開場してから3年余り、歌舞伎座ではそうした光景がもはや日常といっていいほど、盛況が続いている。
こうした状況が続いているのは、伝統芸能としてその芸術性を日々磨き上げてきたことが大きい。だが、それだけでなく、「興行」という収益の変動が大きい事業でありながら、安定的に利益を生み出すビジネスモデルを確立させることに成功したからという側面もある。
かつて存続の危機を迎えながらも、松竹が血のにじむ思いで育て上げた歌舞伎ビジネスについて、ベールに包まれたその舞台裏をのぞいてみよう。
歌舞伎座の興行収入・146億円
再開場した13年4月から、14年3月(13年度)までの1年間で、歌舞伎座がたたき出した興行収入は146億円に上る。
それまでの興行収入を見ると、おおむね80億円前後で推移しており、約3年間のブランクを経て再開場をした効果がいかに大きかったかが分かる。
それを支えてきたのが観客動員数。13年度は132万人、毎月10万人以上が歌舞伎座に足を運んだ計算だ。
13年度は、再開場に伴って公演日数や回数を若干増やしたという特殊要因もあるが、14年度(14年4月~15年3月)も101万人と高水準をキープ。オペラの聖地、米国のメトロポリタン歌劇場が年間80万人前後だから、そのすごさがうかがえる。
歌舞伎座の興行収入の89%は、チケット販売によるもの。こうした抜群の集客力によって、好業績をたたき出しているわけだ。