あなたは日本を代表する伝統芸能・歌舞伎について、どのくらい知っているでしょうか。本連載では、元マイクロソフト日本法人社長で現在は書評サイト「HONZ」の代表を務める成毛眞さんと、「歌舞伎ソムリエ」としてイヤホンガイドで定評のあるおくだ健太郎さんが、歌舞伎の楽しみ方を語り合います。ビジネスマンとして知っておきたい歌舞伎と日本文化の深いつながりと、年に一度は歌舞伎座に足を運ぶことで得られる計り知れないメリットについて、対談形式でお届けします。
相手の予想を超えるのが謝罪の鉄則
成毛 『違法ではないけれど不適切』、『第三者の厳しい目』など数々の迷言を生んだ都知事が辞めてしまったので、次なる『トップリーダー』を選ぶため、7月31日に都知事選が行われますね。
おくだ そうですね。舛添さんは芸術に興味がおありになるようだけど、歌舞伎をご覧になったことはあるんでしょうか。歌舞伎ファンならあのような記者会見にはならなかったかもしれません。
1955年北海道生まれ。中央大学商学部卒。マイクロソフト日本法人社長を経て、投資コンサルティング会社インスパイア取締役ファウンダー。書評サイト「HONZ」代表。『本棚にもルールがある』(ダイヤモンド社)『ビジネスマンへの歌舞伎案内』(NHK出版)『教養は「事典」で磨け』(光文社)など著書多数。
Photo: Kazutoshi Sumitomo
成毛 歌舞伎ソムリエのおくださんらしい発言ですが、でも、なぜですか?
おくだ ファーストクラスに乗ってスイートルームに泊まっていたとか、政治資金で家族と一緒にホテル三日月に泊まっていたとか、習字のために中国服を買ったとか、公私混同疑惑を追及されていたとき、疑惑が出ては弁明し、また疑惑が出ては弁明しを、小出しに小出しに、繰り返していたからです。
成毛 確かにあれは、良くない謝罪会見、釈明会見の見本のようでした。企業の危機管理の観点では、すべてをいっぺんに明らかにして潔く、相手の予想を超えて深く謝るのが鉄則なのに、その真逆をいってしまっていました。
おくだ 経営者視点でもそうなんですね。実は、歌舞伎視点でもそうです。成毛さんは『白浪五人男』をご覧になったことがあるでしょう?