なぜ、オフィスの仕事の生産性は上がらないのでしょうか。トヨタ自動車でホワイトカラーの業務の質の向上を推進するメンバーが、トヨタグループ内外の仕事の進め方の参考としていただければと編集した書籍『トヨタ公式 ダンドリの教科書』から、注目のノウハウを紹介します。今回は、使えないマニュアルの特徴について本書でのコーチ役、吉野部長が解説します。

トヨタの仕事術で重視する
「知見」を伝えるということ

使えないマニュアルに書かれているのは、<br />手順だけで、「○○○○○」がない

 異動などで新しい担当者に代わったら、またゼロから仕事を始めなければいけない。担当者が変わるたびに同じような失敗が繰り返されている。その人しかできない仕事が増え、担当者が変わると仕事の質が低下してしまう。

 先人たちの「知見」を活かせず、失敗を繰り返していては、各担当者の成長はもとより、職場力も向上していきません。

 ホワイトカラーの生産性を阻害している理由の一つには、知見がまったく伝承されていないことが挙げられます。

 多くの職場で「マニュアル」が作られたりしていますが、マニュアルはやることだけが書かれていることが一般的です。それぞれのやることで、「何が必要か」までは書かれていない。「過去の失敗」や、その「仕事を実施する理由」なども書かれていることは少ない。

 具体的には、トヨタの仕事術で重視される「目的・目標」「最終的なアウトプットイメージ」「判断基準」「必要なもの」といった内容は網羅されていないことがほとんどです。これでは、マニュアルとしては役に立ちません。

 それを網羅したものへとバージョンアップしていく必要があります。そこには、振り返りで明確になった問題点と、その改善策、うまく進められたことも記していきます。次の仕事の財産として活かしていくことで、仕事の質が向上していきます。