米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長が今年2008年4月2日、両院合同経済委員会で証言を行ったが、市場が期待していた追加利下げや公的資金注入に言及する発言は一切見られなかった。ちょうど1ヵ月前の2月29日、「小規模な金融機関の破綻があるかもしれない」と言った、あの発言からは、様変わりしたことを理解する必要があるようだ。

いよいよ株式市場に向かって
資金が動き始めた!

 議長は、今回初めて、アメリカ経済が年の前半に景気後退入りする可能性に言及するとともに、一連の金融・財政政策によって経済の縮小は短期間に終わり、2008年下期以降改善して、2009年には成長トレンドに戻るという見通しを示した。市場関係者から見れば、まだサブプライム問題による金融不安と住宅価格の下落は何も解決していないように見えるが、どうやら議長には少し先が見通せる状況になってきたようだ。

 確かに、エコノミストもマスコミも、景気後退局面や相場の下落局面では弱気一色で、悪いニュースばかりを誇張して伝えがちであるが、実はその影で、確実に経済は日々変化し続けているものである。

 先頃、米商務省が発表した2007年の貿易収支の赤字額が2001年以来、なんと6年ぶりに減少に転じた。その原因は、昨年後半からのドル安によって、米国の工業製品に対する海外需要が過去最高水準となり、輸出を大幅に押し上げたようだ。

 住宅バブル発生にともなう過剰消費に依存した内需拡大経済が終焉し、外需を中心とした新たな牽引車が登場したことで、バーナンキ議長の予測が現実のものになる可能性は否定できなくなった。

 折しも、3月半ばに初めて1000ドル台に乗せた金は下げ足を早め、887ドルと続落しているし、111ドルの高値をつけた原油先物価格も100ドルを切るところまで下げてきている。信用不安から商品に向かっていた資金が、いよいよ株式市場に向かって動き出したのではないだろうか。

4月半ばの米大手金融機関の
損失額の発表で、市場はどう動くか?

 さて、市場の関心は、4月半ばに発表が相次ぐメリルリンチやシティグループなどアメリカ大手金融機関の損失額がどの程度になるかという点に移ってきたが、それが市場の予想の範囲内であれば、悪材料の出尽くしで、本格反騰する局面を迎えると思われる。

 仮に、予想に反して損失が拡大した場合でも、おそらく今回の欧州金融大手UBSのように資本増強策を同時に発表して、市場は反騰に転ずるのではないだろうか。つまり、どちらに転んでも、こんなに安値に放置されている今が買いなのである。