パフォーマンスアップの請負人として、レアル・マドリード、マンチェスター・ユナイテッド、アーセナルをはじめ、オリンピックチームや一流ビジネス企業にまで、毎朝、気分も体調も最高の状態になれる「眠りのメソッド」を提供している伝説的な「スリープコーチ」がいる。これまで理論的な研究者や専門家のメソッドを実践しようとしてもうまくいかなかった人たちが、彼がコーチをはじめると次々と成果が上がるようになり、続々と世界の有名チームから声がかかっているという。海外メディアでも「彼はいったい何をしているのか」と噂されてきたが、このたびついにその門外不出のメソッドを著書『世界最高のスリープコーチが教える究極の睡眠術』にまとめた。本稿では、その驚くべき内容から、まえがきの一部を特別公開する。

「睡眠」と「回復」の最先端のメソッド

レアル、マンUがやっている「疲れが消える」独特の眠り方

 私の職業は「スポーツスリープコーチ」だ。その辺の求人情報では見かけない職種かもしれない。それもそのはず、これは自分で切り拓いた役割について私がそう名付けたものだ。キャリアのスタート地点は、ヨーロッパ最大の寝具販売グループ、スランバーランド社で海外販売・マーケティング部長をしていた90年代にさかのぼる。

 そのころ私は、イギリスのトップクラスのサッカーチームが「睡眠」と「回復」にどんな策を講じているのかに興味を持った。

 さぞかし洗練されたアプローチを持っているに違いないと思って、マンチェスター・ユナイテッドに手紙で質問してみたところ、何の対策もしていないことが判明した。後に3冠達成というチームの歴史的偉業の立役者となるサー・アレックス・ファーガソン監督から届いた返事には、こんな誘いの言葉が書かれていた。

「よろしければ、一度見にきてくださいませんか?」

 当時、睡眠はパフォーマンスに関わる要因とは見られていなかった。だが私にとって幸運だったのは、戦略としてスポーツ科学の比重が高まりつつある時代であったこと、そして歴史に残る名監督の好奇心がうずいたことだった。

 もうひとつの幸運は、背中に故障を抱えた選手に直接関わらせてもらい、彼のルーチンと寝具の調整をさせてもらえたことだ。もちろん、マットレス1枚だけで背中を治す(そんな主張をするメーカーもある)のは無理なことだが、私はその選手のコンディション管理について、目に見える結果を出すことができた。

 その後、さらに深くチームに関わるようになった。92年の名選手たち――ライアン・ギグス、デヴィッド・ベッカム、ポール・スコールズ、ニッキー・バット、ネヴィル兄弟――だけでなくファーガソン監督自身にまで寝具の提供やアドバイスをさせてもらった。

 監督やコーチングスタッフから選手にいたるまで全員が、私が推奨するメソッドを使うというトップダウンのアプローチは、現在も続いている。

 そのころまでに、私はスランバーランド社を去る準備をしていた。睡眠そのものに対する興味が、たんに商品を売るという仕事への興味を上回ってしまったからだ。

 睡眠についての助言と睡眠の質の向上を促進する目的で設立された消費者教育の機関である英国睡眠協会の会長に就任してさらに知識を深めたうえ、その活動を通じて睡眠学の権威クリス・イジコフスキー教授と知り合い、貴重な友人・同志となることができた。