11月6日に行われるアメリカ大統領選挙の投開票まであと1週間となった。第3回目のテレビ討論会は現職の民主党・オバマ大統領が優勢のうちに終了したが、共和党・ロムニー候補との激戦は今も続いており、どちらが大統領になるかは最後まで不透明な状態だ。激戦のまま終盤を迎えた今回の大統領選で最大の争点といえるのは、やはり「経済政策」だろう。一時は失業率が10%を超えるなどこの4年間のアメリカ経済を振り返り、オバマ大統領に厳しい声が寄せられているが、本当にオバマ大統領の経済政策は失敗だったのか。ロムニー候補が新大統領となれば、アメリカ経済に復活の兆しは訪れるのか。クリントン政権下で大統領経済諮問委員会(CEA)委員を務めたジェフリー・フランケル ハーバード大学教授に話を聞いた。(聞き手/ジャーナリスト 瀧口範子)
オバマ大統領の経済政策は失敗ではない
――共和党のミット・ロムニー候補は、オバマ大統領の経済政策は失敗だったと強調し続けているが、あなたの見方は逆だ。まずそれを説明してほしい。
(Jeffrey Frankel)
ハーバード大学ケネディー行政大学院教授。MIT(マサチューセッツ工科大学)で経済学の博士号取得。1999年より現職。NBER(全米経済研究所)の 国際金融とマクロエコノミックス・プログラムのディレクターを務め、景気後退を公式に宣言する同研究所の景気循環日付委員会メンバーも兼任。カリフォルニ ア大学バークレー校教授(1987~1999年)、クリントン政権大統領経済諮問委員会委員(1996~1999年)などを務め、現在は、ニューヨーク地 区連銀、ボストン地区連銀アドバイザーなどの役職を兼務。
オバマ大統領の政策が成功しているかどうかは、ある限りの経済分析結果を見るか、それとも人々がどう感じているのかで答えは違ってくる。後者の場合ならば、過去4年間のアメリカ経済は、失業率も含めていい状態ではない。だが、飛行機にたとえると、オバマが大統領に就任した当時のアメリカは1930年代以来の不況にあり、機首から真っ逆さまに下降している飛行機と同じ状況だ。ことにGDPは後ほど下方修正されたので、当時ひどいと思っていたよりも実際にはもっと悪い経済環境の中で、オマバは操縦席に座ったのだ。
擁護派はオバマ大統領が墜落、つまり大恐慌を防いだと言い、反対派はそんなことはないと言い張る。だが、はっきりしているのは、あのような経済政策を採らなかったらどうなったかは、永遠にわからないということだ。
――確かに証明のしようがない。
しかし、飛行機のたとえに戻ると、オバマ大統領は就任直後に機首をどうにか持ち上げて、下降速度を落とした。水平飛行になったところで、2009年6月に最も高度の低い低空飛行となった。これは経済後退が正式に終わったとされる月で、就任後たった5ヵ月後のことだ。その後飛行機はずっと上昇を続けている。もちろん今も人々が希望したほどの高度には到達していないが、就任時よりは高くなっている。