「蟻の穴から堤も崩れる。今回の件が“蟻の一穴”になるのではないか」──。日本医師会関係者は高脂血症治療薬「エパデール」が大衆薬(OTC薬)に転用されることを嘆き恐れている。
10月中旬、厚生労働省が主催する薬事・食品衛生審議会の一般用医薬品部会はエパデールのOTC化を了承、早ければ年内にも正式承認されることになった。来年にも持田製薬が生産するエパデールを大正製薬と日水製薬がOTC薬として発売する見通しだ。
病院や診療所で医師が処方する医療用医薬品から、OTC薬に転用(スイッチ)された薬は「スイッチOTC薬」と呼ばれる。スイッチOTC薬になると、消費者は医師の処方箋なしに薬局・薬店の店頭で購入できるようになる。昨年は第一三共が解熱鎮痛剤「ロキソニン」、エスエス製薬が鼻炎薬「アレジオン」のスイッチOTC薬を発売し、話題となった。
エパデールをスイッチOTC薬にする申請が出されたのは2009年7月。10年、11年とも部会で審議されたが、医師会側委員の反対で「継続審議」となった。今年10月の部会でも医師会側委員は強硬に反対したが、多数決で決着した。
厚生労働省はスイッチOTC薬を医療費削減策の一つとして期待しているが、医師会をはじめ、医師や病院経営者からは、「安全性で問題がある」「受診抑制につながる」として反対が根強かった。もっともエパデールの原料は、イワシの油。安全性は高いとされる。
それでも承認が強硬に反対されてきたのは、「生活習慣病薬」として初のスイッチOTC薬であるためだ。