企業は「人件費増」が強いられ
個人は「キャリア観」の転換が求められる

 グローバル競争での厳しい戦いに苦しむ日本企業に、高年齢者雇用安定法の改正が告げられた。希望者全員が65歳までは雇用が継続されることとなる制度だ。この改正の影響を「高年齢層」に限った問題と捉えると、状況を見誤ることとなる。この制度が企業・ビジネスパーソン個人の双方に与える影響について見てみたい。

 まず、企業にとっては事業運営において、人件費の増加という新たな負担を強いられることとなる。

 これまでの法律では、労使協定によって再雇用の基準を決めることができたため、全員がその対象とはならなかった。そのため、現在、従業員301名以上の大企業において65歳以上まで働ける企業の割合は24.3%に留まっている。

 しかし、今後は希望者には、すべて雇用機会を提供することが必要となる。各社はこの改正を受けて、こぞって新たな再雇用制度の整備に動いており、この割合は急激な増加が見込まれる。

 収益拡大への見通しが不透明な中、人件費の増加は今後の事業運営の重荷となることは間違いない。そのため、なかには、人件費総額を抑制するために、再雇用制度に伴う人件費の増大を、中堅社員の賃下げによって賄おうとする企業も出てきているようだ。

 また、個人にとっては、自身のキャリア観の転換の契機となる。

 多くの日本企業が厳しいグローバル競争にさらされるなか、給与の右肩上がりは望めなくなっていることは読者の皆様の実感の通りである。

 また、今後は、年金受給年齢の一層の引き上げも予測されており、高年齢者となっても自らの力で逞しく生き抜いていくこと、いわば、ビジネスパーソン一人ひとりにとって「一生涯稼げる力」をつけることが必要となっている。

 本稿では、こうした状況を踏まえ、

(1)企業が「グローバル競争・国内市場縮小における人件費負担の増加」にどう対処していくのか?

(2)そして個人が「一生涯稼げる力」を身につけるためにどうするべきか?

 について考えていきたい。