巷に出回るお金の量を増やせば物価が上昇してデフレを退治できる――。アベノミクスのリフレ政策は本当に有効なのか?お金が有する力とその限界、さらにリフレ政策の危うさについて、『なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?』の著者・山口揚平さんと慶應義塾大学ビジネススクール准教授の小幡績さんが独特の視点から議論を交わした。

男子はカネ、女、権力という3つの欲望に取り憑かれている

山口揚平(以下、山口) 「お金が究極のマスターベーション」とは、いったいどういう意味なんですか?

小幡績(以下、小幡) とかく男子は太古の昔から、カネ、女、権力という3つの欲望に取り憑かれている。もちろん、女子の発想はまったく違うかもしれないけど、有り余るほどのカネがあれば権力や好みの異性も手に入れられると男子は錯覚しがちだ。どんなに強大な権力を握っても、下々の者が必ず言いなりになるとは限らない。カネをちらつかせて親しくなったところで、その女性が喜んでいなければ虚しいだけなんだけどね。

山口 錯覚したままお金を追い求めて、自己完結してしまっているという意味ですか?

小幡 完結していない魅力。魔力。お金があれば無限に可能性が拡がるように思い込んでしまうという錯覚。見たこともない金額のお金を手にすれば、自分の人生が今とは変わってくるのではないかと期待してしまう。だから、庶民は「もしも6億円が当たったらどうしよう?」と夢を膨らませながら宝くじを買う。もしも最高賞金が100万円程度なら、その金額ではさほど興奮しないだろう。アイドルと同じで、実際には手が届かないからこそ、思いが募るわけだ。