政府は3月1日、「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案」、いわゆる「マイナンバー法案」を閣議決定して国会に提出した。同法案は、現在、国会で精力的な審議が行われているが、マイナンバー制は、国民の自己情報コントロール権を尊重し、行政機関が個人情報を適切に取り扱うことができれば、行政手続きをシンプルにするという意味で、わが国の社会を大きく変える1つの起爆剤になる可能性を秘めているのではないか。

マイナンバーの活用は
2016年1月を予定

 法案によれば、2015年10月に全国民と中長期滞在の外国人に対して、個人の識別番号が通知され、2016年1月からマイナンバーの活用が始まる予定だ。顔写真付きの「個人番号カード」も付与されるという。当面は、納税や年金・健康保険の保険料納付・受け取り、生活保護や児童手当などの給付にマイナンバーが使われる。これによって、複数の役所に分かれて保管されてきた情報が一元化され、国民は様々な給付の申請に必要な書類等を入手するため、複数の役所の窓口を回って歩く必要がなくなり、利便性が大幅に向上しそうだ。また、行政コストの削減も期待できそうだ。

 しかしながら、この法案については、2004年に旧社会保険庁で発覚した多数の職員による業務目的外の国民年金保険料の未納情報等に関する情報漏洩のような心配が付きまとう。個人情報の保護という面から、マイナンバー制の導入を心配する考えがあることは当然だろう。このような背景もあり、今回は政府のどの機関が、いつ、自分の情報を提供したかが、個人でチェックできる仕組み(マイ・ポータル)や、行政機関から独立した委員会による地方公共団体などのチェックの仕組みが考えられている。

 こうした個人情報の取り扱いが適切になされることを前提にすれば、マイナンバー制は、各個人が社会保障の負担と受益をはじめとする自らの各種情報にインターネットを介して簡単にアクセスできる仕組みでもあるので、行政サービスのコストが下がるだけではなく、記載上のちょっとした誤りなど行政処理のミスもなくなると予想され、結果として市民生活に資するのではないか。