バブルを起こすと中央銀行が事実上宣言したという点で、日銀が4月4日に決定した金融政策は正に「次元が異なる」ものとなった。
フィリップス曲線がフラットな日本においては、オーソドックスに需給ギャップを縮小させてもインフレ率は2年以内に2%には行かないと日銀は認識している。それ故、国債バブル、円安バブル、株式バブル、不動産バブルを発生させて、国民や企業のマインドを変化させるという壮大な実験に日銀は打って出た。
具体的な手法として、まず、日銀は長期国債購入額を強烈に増額した。従来の月間4兆円弱から7.5兆円へ増える。それは日本政府が毎月発行する長期国債の4分の3に相当する(FRBがQE3で市場から購入している国債は、額面で発行額の25%、市場価格で28%)。これほど大きな財政赤字なのに、日銀の買い占めによって市場では国債が足りなくなる。
銀行や保険会社等は、資金の一部を国債から外貨建て資産かリスク性資産へシフトさせる必要が生じる。金融庁はデフレ脱却を目指す政府の意向を受けて、金融機関に融資拡大を促すと報じられている(「ニッキン」4月5日号)。一部のマネーは外貨建ての債券や貸し出しに向かい、円安が加速され、一方で国内の不動産に向かうマネーもあるだろう。今は日本経済の将来に対するユーフォリア(酔狂)はないので、1990年前後のような大きなバブルは起きにくい。しかし局地的なバブルは多数発生するだろう。日銀はETF(上場投資信託)やREIT(不動産投信)の購入も増額した。