アベノミクスによる景気回復期待が広まるなか、株式市場と共に盛り上がりつつあるのが不動産市場だ。マンションや一戸建てなどの住宅を扱う業者は、千載一遇のチャンスとばかりに、「インフレや消費税増税が始まる前に住宅を購入するほうがお得」と宣伝し、一棟でも多くの家を売ろうと奮戦している。しかし、リーマンショック発生直前の不動産プチバブルを思い起こすと、こうしたにわか活況の状況は「家探し家族」にとってリスクが大きいもの。クオリティのわりに価格が高い、割高の家を掴んでしまうリスクもある。家探し家族は、足もとの不動産市場をどう見つめるべきか。納得のいく物件を見つけるためには、どんな心得が必要か。(取材・文/宮崎智之、協力/プレスラボ)

アベノミクスで住宅が買い時に?
にわかバブルに沸く不動産市場

「子どもも大きくなってきたので、家を購入したいと思っていました。『アベノミクス効果で、そろそろ住宅が買い時』という雑誌の特集記事が増えて来たので、いい物件が売れてしまわないかと、少し焦っています」

 そう語るのは、事務用品メーカー勤務の40代男性だ。東京都台東区に住むこの男性は、最近、近所に新築物件の内覧会が増えてきたこともあり、週末はもっぱら家族と一緒に物件巡りに費やすという。

 会社の業績は芳しくない。男性自身、「近い将来、給与や賞与が増える可能性はあまり考えられない」という。そんな彼が今目を付けているのが、4000万円台半ばの中層マンション。「仮に35年間の固定金利で住宅ローンを組む場合、現在の給料のままでは生活費を従来より年間50~60万円近く節約しないといけなくなる」(男性)と語る。

 それでも、住宅を購入したいという意志は固い。アベノミクス効果で景気回復への期待が高まるなか、将来の資産価値上昇を見通しているからだ。この男性のように、最近住宅購入に意欲を示す人は増え続けている。

 景気回復局面になると、株式市場と共に活況を呈するのが、一戸建て、マンションなどの住宅市場だ。足もとを見ると、徐々にではあるが、その傾向が見て取れる。

 国土交通省が発表した「平成25年地価公示」によると、依然として全国的に下落傾向が続いているものの、下落率は縮小し、上昇・横ばいの地点が増えている。全国的に見ると住宅地は1.6%下落したが、前年の2.3%と比較すると下落率は改善。