「それ、まだ何も聞いてないです」
やる気のない新人の言葉に隠された真意
最近、ある企業の女性社員Aさんから聞いた話だ。
Aさんは、あるプロジェクト専門の総務兼経理担当で、もう10年近く担当してきた。彼女には、同じく10年近く働いてきた同僚がいて、2人3脚で仕事をこなしてきた。プロジェクト自体が特殊な業務なので、他の人に任せるのは難しかったそうだ。
その同僚がこの春に異動になった。新人が来てもすぐには使い物にならないため、Aさんは春から実質的に1人で業務を回さなくてはならず、その覚悟もしていた。
新人にはいわゆる「派遣社員」が雇われる予定だったため、新年度になるぎりぎりまで人事は難航していたそうだが、土壇場で決まった人物が、他社の同種のプロジェクトで働いていた経験のある人だったため、Aさんの上司も含め、皆喜んでいたという。
実はAさんは、夫が夏に海外赴任することになり、6月までに引継ぎを済ませたかった。仕事のことが全くわからない素人が来たのでは、引継ぎだけで、数ヵ月かかる。そのことを考えれば、経験者が来てくれるのはまさに「渡りに船」だった。
新しく入った人物も女性で、Bさんといった。Bさんは性格も社交的で、人間的に問題はなかったのだが、彼女が職場に来て2週間ほどで態度が大きく変わった。
というのは、引継ぎに必要な情報を話しても、翌日には「聞いてません」「存じません」と返答が返ってくることが多くなったからだ。Aさんは、その後口頭ではなく、メールで用件を送るようになったが、「あ、メール見てませんでした」「そんなメール、受け取ってないです」といった具合で、全く仕事を覚える気がないように感じる。
上司から何か聞かれても、「それ、まだAさんから何も聞いてないです」と答えるため、Aさんは上司から「ちゃんと引継ぎをやってくれ」と言われた。