日本のTPP(環太平洋経済連携協定)交渉への参加がやっと実現しそうだ。TPP交渉参加国のすべてが日本の参加に同意した。あとは米国議会の承認を待つのみである。7月の交渉からは、日本もメンバーとして参加できるのではないかと期待される。

 ただ、そうした参加の同意を得るため、日本は米国に対して譲歩を強いられた。米国が日本車に課す関税の引き下げを最大限後ろ倒しにする、という合意をさせられたのだ。米国の自動車業界が強く求めてきた措置である。

 せっかくTPPに参加するのに、自動車の最大市場である米国の関税の壁が取り払われるのには相当な時間がかかりそうである。自動車業界にとっては、TPP参加のメリットは非常に小さいのではないか、という議論が出始めている。

米国の関税が撤廃されなくても
自動車産業にメリットはある

 もちろん、米国が自国市場を開けようとしないのは問題だ。日本では輸入車への関税はゼロである。それと合わせるのであれば、米国の自動車関税もできるだけ早く撤廃してもらいたい。

 ただ、通商交渉は政治なので、なかなか理想的には進まない。自動車業界、とりわけその労働組合は、米・民主党に大きな影響力を持っている。そうした政治的な現実のなかでは、TPPに参加するために、日本側が譲歩するのはやむをえなかったと思われる。

 それでも、TPPに参加することが日本の自動車業界にとってあまりメリットがない、というのは誤りである。日本の自動車業界にとって、アジアの市場は今後需要の拡大が見込まれる重要な存在だ。

 そうした国々と日本は経済連携協定を結んできたが、必ずしもアジア諸国の市場開放を十分に進めることはできなかった。日本自身が農産物で関税撤廃の例外措置を求めてきたので、それと引き換えにアジア諸国の例外措置を認めざるをえなかった、という面もある。

 TPPは、基本的に例外をほとんど認めない関税撤廃が前提となる。アジア諸国の市場は日本や米国の企業にとって大きく開放されることになる。もちろん、現時点でTPPに参加している東南アジア諸国は、ベトナムやシンガポールなどに限定されている。

 しかし、TPPがアジア太平洋地域の経済連携協定の大きな流れとなれば、いずれタイやインドネシアなども参加してくると考えられる。東南アジアに巨大な開かれた市場ができることは、日本にとって重要な動きである。