自民党の「日本経済再生本部」が、政府に銀行再編の促進を提言する構えを見せ、地方銀行がざわつき始めている。企業の資金需要の低迷で、利益が伸び悩む地銀は包囲網をどう突破するのか。

 ふくおかフィナンシャルグループ(FG)のように広域(福岡・熊本・長崎)をカバーする銀行グループのさらなる誕生を促進すべき。地方銀行再編により、地域企業を指導・育成するための専門性を持った平成版長期信用銀行を設立──。

 4月中旬。与党・自民党で成長戦略などの立案を担う「日本経済再生本部」は、政府への中間提言の素案に、地域の再生と円滑な資金供給に向けて県境を越えた銀行再編の必要性を説く、異例の文言を盛り込んだ。

 元官房長官で政策通の塩崎恭久衆院議員を中心にまとめたとされるこの提言案に、当事者の地銀、第二地銀関係者は強烈に反応した。

「あんたたちはまたそうやって先生方の振り付けをするのか」

 素案を見た東日本の地銀幹部は、怒りが収まらなかった。銀行を監督する金融庁が政治家に根回しをし、間接的に再編の圧力をかけてきたと感じたからだ。素案を片手に受話器を取ると、金融庁に電話をかけ、怒りをぶちまけたという。

「なぜ与党が再編に言及し始めたのか」。地銀の間で動揺が広がる中、濡れ衣を着せられた格好になった金融庁は、幹部も動員し事態の収拾に動く。

「再編の事例として、特定の金融機関の名前を挙げるのはいかがなものか」「長信銀の設立というのは筋があまりよくないのでは」

 議員会館を回り、与党議員の説得をする中で、素案の具体的な文言の調整に乗り出したのは、4月下旬に入ってからだった。

 大型連休直前まで続いた調整の結果、党の再生本部が近く発表する最終案には、「ふくおかFG」や「長期信用銀行の設立」といった文言は削除され、「地域金融機関の広域での提携・再編等を通じた企業・産業サポート力向上」という表現に書き換えられた。

 霞が関の官僚たちは日々、文書のやりとりにおいて、自分たちの不利益になるような表現にならないよう、「てにをは」一つにも執拗にこだわる。今回も独特の「霞が関文学」の下、再編という文脈の中に「提携」と「等」という単語をねじ込み、再編促進に向けた制度設計を迫る政治の圧力を、かろうじてかわしたようにも見える。