障がい者を積極的に雇用するだけでなく
月給を10倍にする店づくりへの挑戦

 宅急便の創始者、ヤマト運輸の小倉昌男さんが、障がい者雇用のために15年前に始めたスワンベーカリー。この店では、世間で月給1万円以下に過ぎなかった障がい者の賃金を10万円にすることを目標に、現在、全国27店舗、354人の身体障がい者、知的障がい者、精神障がい者が働いている。

障がい者の月給を10倍にする店写真手前がスワン・ベーカリー、奥にスワン・カフェ

 障がい者の働く場所は一般の企業のほかに、共同作業所や小規模授産施設が挙げられる。共同作業所で作られるものは、近隣の企業や店舗が善意で販売しているほか、福祉バザーなどに出品されることが多い。また共同作業所は障がい者の就労開発を目的とはしているが、実態はデイケアセンターのような機能を担っており、障がい者が自力で稼ぎ、生きていくことを後押しする場には成り得ていない。1ヵ月の給料が1万円以下という給与水準の背景には、以上のような実態がある。

 福祉はカネ儲けではない。しかし障がいが重い人ほどお金が必要であり、儲かる仕事、付加価値の高い仕事を作り出さねばならない。所得補償に依存しない解決策を生み出さねばならない。また、障がい者自身や親は「この人生をなんとかしなくてはならない」という痛切な問題意識を持っており、やりがいのある仕事、社会と関わる場を作ることが必要と考えている。

 彼らが稼げる仕事をつくることは、彼らの生活を支えるだけではなく、生きる意欲を高めることにも繋がる。しかし、そのような仕事、場は、そう簡単にはない。