「期待されている」のではなく
「利用されている」のでしかない派遣女性
今回は、女性の社会進出が進む職場に深く根を張る、表には出て来にくい「悶えの構造」に焦点を当てよう。取材で話を聞いた女性の名前を、仮にAさんとする。
Aさんは、放送局の翻訳部門に派遣される派遣社員である。42歳で独身、仕事はできる。20代の頃から懸命にキャリアを積み重ねてきたが、気がつくと同世代の女性の多くは結婚し、子どもがいる。
翻訳の職場には派遣社員が10人近くいるが、その多くは育児をしながら働く女性たち。Aさんはその同僚たちから利用され、さらには上司たちからも利用され尽くしていると嘆く。Aさんが働く他の部署の数人の社員からも事情を聞いたが、決して被害者意識が強い人ではないようだ。
企業の職場で女性の活躍の場が増えていると言われるが、その実は、まだまだ男性上位の職場が多い。優秀でありながら権限を与えられにくい女性で、特に独身者の場合は、「便利な人」として理不尽な扱われ方をされるケースがあり得る。
女性の職場進出を考える上で、本来は優秀な女性たちの待遇をもっとよくすることが議論されるべきであると思う。筆者は、そのような問題提起を含めて取材を試みた。男性読者諸氏にとっても、思い当たるフシはないだろうか。
筆者 「職場や上司に利用されている」とは、どのような状況を意味するのですか。
Aさん 私が本来しなくてもいい仕事までさせられる。たとえば、他の派遣社員の仕事もするし、正社員の管理職がするべきことまでせざるを得ない。
筆者 「期待されているから」と受け止めることは、できないのでしょうか。