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悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

「おれが片道切符で低学歴のあいつが出世なんて!」
不本意な人事異動を恨み抜く元編集者の“甘えの構造”

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第20回】 2013年11月19日
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営業部への異動は事実上の片道切符
無念な思いに悶える元編集者の告白

 今回は、会社の人事異動に不満を持ち、悶える中堅男性社員(40歳)のケースを紹介しよう。この男性を仮にA氏とする。

 A氏は、社員数500人ほどの出版社に勤務する元編集者だ。新卒で入社し、1年前まで17年間ほど雑誌や書籍の編集に関わった。しかし、営業部に異動となる。そのことに納得の行かない気持ちを抱え続けている。

 A氏に限らず、人事異動に落ち込んだり悲しんだりする会社員は少なくない。その思いを聞くと、組織の理不尽さが垣間見えて来ると共に、一方で会社員のエゴや甘えを感じ取ることもある。

 悶える職場の多くは、会社という組織や会社の上層部によってつくり出される。「人事異動」はその大きな要因の1つになり得るものだろう。当連載でも指摘してきたとおり、我々はこうした組織の理不尽さについて、深い問題意識を持つべきだ。

 しかし時には、社員自らが「悶える原因」をつくり出し、苦しむこともある。筆者にとって、A氏のケースはそう思えた。今回は、読者諸氏と共にそのことについて考えたい。


筆者 1年前、編集部から営業部へ異動になったことに、理不尽な思いを感じているのですね。

A氏 人事異動になることは、仕方がないとは思う。新卒も中途も、編集者、営業、管理部門と3つのコ―スに分けられ、採用されている。私や同時期に異動になった編集者6~7人は、新卒のとき編集者として内定を得て、入社した。

筆者 それは「職種別採用」と言えるのでしょうかね。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

 企業で働くビジネスマンが喘いでいる。職場では競争原理が浸透し、リストラなどの「排除の論理」は一段と強くなる。そのプロセスでは、退職強要やいじめ、パワハラなどが横行する。最近のマスメディアの報道は、これら労働の現場を俯瞰で捉える傾向がある。

 たとえば、「解雇規制の緩和」がその一例と言える。事実関係で言えば、社員数が100以下の中小企業では、戦前から一貫して解雇やその前段階と言える退職強要などが乱発されているにもかかわらず、こうした課題がよく吟味されないまま、「今の日本には解雇規制の緩和が必要ではないか」という論調が一面で出ている。また、社員に低賃金での重労働を強いる「ブラック企業」の問題も、あたかも特定の企業で起きている問題であるかのように、型にはめられた批判がなされる。だが、バブル崩壊以降の不況や経営環境の激変の中で、そうした土壌は世の中のほとんどの企業に根付いていると言ってもいい。

 これまでのようにメディアが俯瞰でとらえる限り、労働現場の実態は見えない。会社は状況いかんでは事実上、社員を殺してしまうことさえある。また、そのことにほぼ全ての社員が頬かむりをし、見て見ぬふりをするのが現実だ。劣悪な労働現場には、社員を苦しめる「狂気」が存在するのだ。この連載では、理不尽な職場で心や肉体を破壊され、踏みにじられた人々の横顔を浮き彫りにし、彼らが再生していくプロセスにも言及する。転機を迎えた日本の職場が抱える問題点や、あるべき姿とは何か。読者諸氏には、一緒に考えてほしい。

「悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史」

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