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悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

うつで辞める部下と辞められる上司はどちらが悪いか
閉じこもり社員と情熱マネジャーが悶えた“心の迷宮”

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第13回】 2013年10月1日
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うつになるのは上司が悪いのか
それとも部下に原因があるのか?

 企業の現場で、うつになる社員が増えている。識者やメディアの多くは、その原因を「労働時間」や「成果主義」と関係があると指摘する。しかし、それは本当に正しいだろうか。

 連載第9回10回では、20代の社員が次々にうつになる企業のケースについて分析した。そこでは、上司の未熟なマネジメントによって生まれた非効率な業務体制が、部下を追い詰めていた現状が浮き彫りになった。

 そこで今回は、社員がうつになる原因をさらに深く掘り下げてみたい。テーマは「部下がうつになる原因は上司にあるのか、それとも部下本人にあるのか」である。

 ひとたび職場でうつの社員が出た場合、社内で「犯人探し」の対象にされるマネジャーや同僚社員も多いだろう。しかし、結局原因がよくわからず、責任の所在が曖昧のままで終わるケースは多い。それでは上司も部下も浮かばれないし、職場の「悶える構造」を解き明かして対策を練ることはいつまでもできない。

 そうしたケースでは、本当に上司や同僚に原因があったのか、それとも本人に原因があったのかを、一度検証してみる必要がある。同じような経験をしたことがある読者諸氏には、一緒に考えてみてほしい。

 舞台となるのは、ヘルスケアの分野で成長する外資系企業(本社・米国)の日本支社だ。この企業で、30代前半の男性社員がうつになり、退職してしまったケースを紹介したい。現在社員数は約150人で、業績は好調だ。

 うつで辞めた部下は、IT部(部員5人、いずれも正社員)に在籍し、直属上司である男性マネジャー(現在42歳)とのコミュニケーションを避け続けていたという。そのマネジャー(ここではA氏と記述する)に取材を試みた。

 結論から言えば、今回の取材でも「労働時間」や「成果主義」に関する課題を見つけることはできなかった。代わりに見える課題は、むしろ部下の上司に対する接し方、部下本人のキャリア形成や仕事への姿勢における課題だった。

 男性マネジャーとのやりとりについては、よりニュアンスを正確に伝えるため、インタビュー形式とした。取材の内容は、実際に話し合われた内容の9割方を載せた。残りの1割は、会社などが特定できる可能性があることから省略した。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

 企業で働くビジネスマンが喘いでいる。職場では競争原理が浸透し、リストラなどの「排除の論理」は一段と強くなる。そのプロセスでは、退職強要やいじめ、パワハラなどが横行する。最近のマスメディアの報道は、これら労働の現場を俯瞰で捉える傾向がある。

 たとえば、「解雇規制の緩和」がその一例と言える。事実関係で言えば、社員数が100以下の中小企業では、戦前から一貫して解雇やその前段階と言える退職強要などが乱発されているにもかかわらず、こうした課題がよく吟味されないまま、「今の日本には解雇規制の緩和が必要ではないか」という論調が一面で出ている。また、社員に低賃金での重労働を強いる「ブラック企業」の問題も、あたかも特定の企業で起きている問題であるかのように、型にはめられた批判がなされる。だが、バブル崩壊以降の不況や経営環境の激変の中で、そうした土壌は世の中のほとんどの企業に根付いていると言ってもいい。

 これまでのようにメディアが俯瞰でとらえる限り、労働現場の実態は見えない。会社は状況いかんでは事実上、社員を殺してしまうことさえある。また、そのことにほぼ全ての社員が頬かむりをし、見て見ぬふりをするのが現実だ。劣悪な労働現場には、社員を苦しめる「狂気」が存在するのだ。この連載では、理不尽な職場で心や肉体を破壊され、踏みにじられた人々の横顔を浮き彫りにし、彼らが再生していくプロセスにも言及する。転機を迎えた日本の職場が抱える問題点や、あるべき姿とは何か。読者諸氏には、一緒に考えてほしい。

「悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史」

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