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学校で子どもが亡くなったり重い障害を負ったりしたのに、何があったか、なぜ起きたかを、学校や教育委員会からまともに説明してもらえない――。
学校管理下での事故や災害で、真相究明や情報の共有を巡って学校側と遺族・被害者側が揉める例が後を絶たない。こうした問題に焦点を当て、事後対応の実態を明らかにしようという全国調査が、この10月から文部科学省で始まった。
実態調査を行っているのは、文科省の「学校事故対応に関する調査研究」有識者会議(以下、有識者会議)。学校事件・事故に関する専門家や遺族らで構成されている。11月5日には第3回会合が行われ、始まった調査の状況が明らかにされた。
受託業者である大阪教育大学メンタルサポートセンターの藤田大輔所長によると、調査の対象となっているのは、今年度までの過去10年間に、学校管理下で発生した事故・災害事例832件。保護者と学校設置者が相互に負担にする災害給付金制度で、医療費や死亡や障害見舞金が支払われた事例で、自死事案は対象外となる。
まず一次調査として、事故の情報や事故後の対応について尋ねるアンケートが学校設置者(私立も含む)に配布され、得られた回答の中から、一般化しやすい6事例ほどを死亡、障害、熱中症等に分類して絞り込む。その後、二次調査として、学校や学校設置者のほか、遺族や家族、検証委の委員に対するヒアリングや実地調査等を行う。
この他に、全国の教育委員会の担当者に学校の安全管理の現状を尋ねるアンケート調査も行っており、来年度に行う事故後の対応ガイドライン策定に向けての課題抽出をした上で、2015年2月下旬にはひとまず調査報告がまとめられる予定だ。
遺族との関係性が
良好な事例ばかり掘り下げられる?
会議では、調査の掘り下げ方に対して、委員たちが次々と違和感を表明する場面があった。
一次調査から、今後の二次調査のヒアリング対象を絞り込む過程で、学校設置者と遺族・家族側の関係が「良好でない」事例が排除され、関係が「良好」な事例ばかりが残りがちな傾向が見られたためだ。
調査を担当する藤田氏の説明によれば、調査の連絡窓口となるのが、当事者でもある教育委員会の指導主事であり、遺族・家族等と最低限のコミュニケーションが成立する事案に限定されてしまうため、仕方がない現象だという。
しかし、良好事例ばかりを調査することになっては、この有識者会議の設置の経緯や趣旨にそぐわないのではないだろうか。