赤字決算というと、なんだか悪いことのように思われるが、決してそんなことはない。損益の種類にはいろいろあり、そのなかで営業利益さえ黒字にしておけば、最終利益が赤字になってもかまわない。常識にとらわれないことで、会社にお金を残そう。

固定観念を捨てて
赤字決算のうまみを知ろう

 私はもうかれこれ30年近く、後継者のためのセミナー(日本経営合理化協会主催「後継社長塾」)の塾長を務め、これまで500社ほどの中小企業の後継者と接してきました。毎月1回、1泊2日のセミナーを開催し、参加費236万円をいただく、日本一高い後継者育成セミナーですから、そこに送り込む企業もお金持ちの優良企業ばかりです。さぞかし、社長も後継者も大変優秀なのだろうと話を聞いていくと、意外にびっくりすることが多いのです。

 後継社長塾でも、当然、私の主張を講義します。

「赤字を出して、キャッシュ(お金)をためなさい! そのためには、こうしなさい!」とアドバイスすると、次の講義の際に、後継者が顔を曇らせながら、こう言うのです。

「先生、社長から猛反対されました。『うちは創業以来、一度も赤字を出したことがない。とてもじゃないが、赤字なんて出せるか。そんなことをしたら、銀行に見せる顔がないだろ! お前はバカか!!』と怒られたんです」

 こう返ってくるではありませんか。とくに、古い時代の経営者になればなるほど、こういう返事が多いですね。

 赤字を出しても、きちんと説明すれば、銀行もわかってくれます。私の主張に猛反対する経営者に限って、利益や赤字にはいくつか種類があることをご存じないのです。さらに、利益を無理やり出すために帳簿を操作したあげく、税金まで支払おうとする経営者がいますが、それは愚の骨頂です。

「先生の顧問先は、優秀な企業が多いですね。本当にうらやましい」

 お付き合いのある弁護士や税理士から、よくこう言われます。確かに、私が長年お付き合いしている企業は、収益性が高く、財務体質も健全な優良企業ばかりです。私は、中小企業のコンサルタントとして、45年にわたり「どうしたら企業にお金がたまるか」を真剣に考え、指導してきました。私の指導方針を理解し、素直に実践してくれた企業が、結果的に優良企業になっているのです。