メディアはあまり報じないが、「100年に一度あるかないか」の経済・金融危機が一段と深刻になる中で、麻生太郎政権は2つの“悪政”を目論んでいる。

 第一は時節をわきまえない“役人優遇”策だ。来年4月から東京・霞が関の本省に勤務する各省庁の若手国家公務員を対象に「本府省業務調整手当」を新設する。巷では失業者が溢れ始めたのに、この手当てが再来年4月から完全実施されると、30歳前後の若手官僚(係長クラス)で月額1万4000円程度の増収になるという。

 第二が公的資金を使った金融機関への資本注入だ。社会的に必要な場合は現行法でも可能な枠組みが整備されているにもかかわらず、「予防的」「中小企業の資金繰り支援」といった大義名分を掲げて、廃止するはずだった時限立法(「金融機能強化法」)をわざわざ復活。これに改正を加えて、税金で救済する場合、これまでのような経営責任を問わないで資金を投入する道を開くという。

 周知の通り、麻生太郎首相は、企業を経営した経験が売り物のひとつ。「政局より政策」と解散・総選挙を先送り、「経済」と「景気」を立て直すと広言してきた。ところが、効果が期待できる経済政策より、公務員優遇手当の新設や金融機関の経営者擁護を優先して、国民の血税をドブに捨てようとしているのが実態なのだ。これでは、とても経済通の宰相などと言えない。すでに20%台前半に落ち込んだ世論の支持率がさらに下がるのは確実な情勢だ。

官僚からの圧力を止められず
麻生内閣が“昇給”実施を決定

 「本府省業務調整手当」の支給対象になるのは、東京・霞が関の内閣府本府や財務、経済産業、総務、外務などの本省に勤務している若手官僚たち約3万5000人。本府省での勤務は、国会における野党の質問攻勢に対応して、深夜・早朝まで政府の答弁などを作成する激務に追われ、人気が離散。近年は特に勤務希望者が減少していることから、激務に応える給与体系を構築する必要があるというのが、この手当を新設する理由だ。

 年金や居酒屋タクシー問題を追及する質問を連発した民主党の長妻昭衆議院議員に引っ掛けて、この手当を「長妻手当」と呼ぶ向きもあるという。

 ちなみに、手当は、来年度と再来年度の2回に分けて段階的に支給額を引き上げて完全実施することになるが、その再来年度以降の手当額の算出は、課長補佐が基本給の9・4%(来年度も9・4%)、係長が4%(同2%)、係員が2%(同1%)となるという。実際の支給額は、課長補佐で月額4万円前後、係長で1万2000円前後になる見通しだ。