危ない企業の兆候は突然のIR担当や経理部長の辞任!守りながら攻める運用で高実績を上げる「ひふみ投信」のファンドマネージャーを務めるレオス・キャピタルワークスの藤野英人さんと、実業家&で人気ブロガーの山本一郎さんの対談は、後半に差し掛かってさらに白熱! 
不正に走る企業には意外な共通点があり、変化を見逃さなければその予兆を察知できるという点で、2人の意見がピタリと一致した。
危ない企業をいち早く見破るには、どんなポイントに注目すればいいのか?
(取材・構成/大西洋平 撮影/和田佳久)

某社の内情を記事にしてもらったら
猛烈な抗議、そして尾行が!?

藤野 ある雑誌のインタビューで東芝のことについて話したら、かなり多くの人たちが読んでくれたみたいで、フェイスブックを通じて僕のところにたくさんのメッセージが届いたんですよ。

 それで、目を通してみたら、「ウチの会社なんて、東芝よりももっとヒドイですよ!」なんて告発的な内容のものが十数社分も混じっていてビックリしました(笑)。

山本 そういった内部告発系の情報はまさに“玉石混交”で、適切なものなのかどうかの取捨選択が重要になってきますね。新聞報道でコナミが揉めた際も、現役社員や退職者から企業のガバナンスに関する確たる情報を握っていたからこそ、クレームはあっても記事そのものを差し替えるなどの圧力に屈することはありませんでした。

藤野VS山本対談 後編<br />「不正に走る企業の意外な共通点」山本 一郎 1973年、東京都生まれ。著作家・ブロガー・投資家・経営者。96年、慶應義塾大学法学部政治学科卒。2000年、IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作を行うイレギュラーズアンドパートナーズ株式会社を設立。ベンチャービジネスの設立技術系企業の財務・資金調達など技術動向と金融市場に精通。著書に『情報革命バブルの崩壊』『「俺様国家」中国の大経済』(以上、文春新書)、『けなす技術』『投資情報のカラクリ』(以上、ソフトバンク クリエイティブ)など多数。

藤野 日経新聞の記事に関わる騒動のことですね。当初は「コナミ、ほころび始めた『上月王国』」という見出しだったのに、なぜか「コナミ、脱・家庭用ゲームへの急旋回」に変更されて。

 記事には人気クリエイターが退社したことや、他社に再就職したコナミOBのフェイスブックで「いいね」ボタンを押した複数の社員がいっせいに異動になったことなどが非常にリアルに書かれていただけに、ネット上でも大きな話題になりましたね。

編集 なお、タイトルはさらに変更されて「コナミ、カリスマ経営のほころび」となり、初回のものに若干ながらもトーンが戻っています。

山本 どんな会社でも、組織内部の問題というのは多かれ少なかれあって、企業文化や特徴、強みの裏返しになっているのも事実です。とりわけ、有力企業の場合は経営陣の個性からくる強力な企業風土に我慢しかねて退職する人たちは、なんだかんだで退職者同士のネットワークがあり、その会社の汚点の証拠を抱きかかえて燻り続けているのが実情です。いろんな会社の告発記事が出たとき、「あの記事の黒幕はお前だろう?」との連絡をいただくことがあるのですが、私自身のブログメディアでやるよりも新聞や週刊誌でやってもらったほうが良いと判断するものについては書いてくれと頼みますし、取材にも協力します。すべては証拠を揃えて調べ終わってから取材依頼をするわけですから、抗議をされても「それは事実でしょう。裁判でもしますか?」という話になるだけで、たいていはそれ以上の騒動にはならないのが通常です。ただし、誰かに尾行されることもあるみたいですけど(苦笑)。

 きっと、こういったケースっていっぱいあって、東芝みたいな事例がボコンと発覚しない限りは、引き続き隠されていくのでしょう。だけど、今回の問題が関係部署への徹底調査につながり、1つの“呼び水”となっていけば、少しずつ状況は改善されていくかもしれないという期待はあります。