チャイナショックで7〜9月期に大損失
だが運用評価としては「褒める」べき

GPIF「損失8兆円」で怒りを向けるべきは誰か?7〜9月期のGPIF運用実績は約8兆円の損失。怒りや不安を覚える人もいるだろうが…

 公的年金の積立金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、7〜9月期の運用実績を発表した。この時期は、中国の景気減速懸念が表面化した通称「チャイナショック」で内外の株価が大幅に下落した時期だったので、どのくらいの損失額になっているかが発表前から注目されていた。

 発表された損失額は7兆8899億円、収益率では−5.59%であった。9月末の運用資産額は135兆1087億円だ。

 絶対額として大きな損失なので、「GPIFは何をやっているのだ」と怒る方、あるいは心配になる方がいらっしゃるかもしれないが、少なくともGPIFの運用部隊に対して「怒る」のは正しくない。

 GPIFは昨年の10月に新しい「基本ポートフォリオ」を定めた。この基本ポートフォリオの内訳は、「国内債券35%、国内株式25%、外国債券15%、外国株式25%」である。

 7〜9月期のそれぞれの資産の収益率は、国内債券が0.62%、国内株式は−12.78%、外国債券は−0.91%、外国株式は11.01%(それぞれGPIFが事前に「ベンチマーク」として定めた指標による)なので、基本ポーフォリオ通りであったならば、加重平均した収益率は−5.87%となる。

 この期間の現実の収益率は−5.59%だから、この間GPIFの運用部隊は、0.28%ほど基本ポートフォリオによる「複合ベンチマーク」を上回っている。常識的な運用評価としては、「よくやった」とされなければならない。期首の運用資産額約141兆1000億円と掛け算すると、4000億円近く損失を少なく済ませたことになる。

 この間のGPIFの運用は、「勝ち・負け」で言うなら、「勝ち」なのだ。運用の仕事ぶりに関しては「褒める」のがフェアだ。

 主な勝因は、内外の株式を「アンダーウェイト」していたことだ。GPIFは6月末時点で国内株式を23.39%、外国株式を22.32%と、標準とされる25%よりも少なく持っており、運用期間中にもあまり大きくは買い増ししなかった。