要約の達人 from flier
【第1回】 2016年7月4日 Flier

人生はドラクエ、リアル難題攻略ゲームを楽しむヒント

『人生ドラクエ化マニュアル II』

要約者レビュー

『人生ドラクエ化マニュアル II』
JUNZO著
ワニブックス 235p 1200円(税別)

 予測できない展開、次々と襲いかかる困難。人生はゲームと似ている。しかし、ゲームは楽しめるのに、人生が辛く苦しいのはどうしてだろうか。人生を「ドラゴンクエスト(以下ドラクエ)」のようなゲームになぞらえ、数多くの障害(敵)を乗り越える人生を「楽しい」と感じられるように導くのが本書である。

 まず、第1章の「人生ドラクエ化理論」には、前作『人生ドラクエ化マニュアル』の内容がコンパクトにまとまっており、具体的な「敵」とその攻略法は第2章で詳しく述べられている。また、第3章では、よくある人生の迷いとその解消策が述べられ、巻末には、学びを実践するためのツールとして、ドラクエさながらの「クエストカード」が収録されているという充実ぶりだ。

 不安定な将来を悲観して「一寸先は闇」だと思えるかもしれない。しかし、不安定な状況が変わらないのならば、洞窟を探検しているのだと前向きに解釈してみるとよい。出口を求めて手探りで進むうちに、多くの気づきやアイディアといった「宝」を手にすることができる。

 さらには、スティーブ・ジョブズやカーネル・サンダース、松本清張、エリザベス・テイラーといった著名人の言葉が登場し、著者の主張に説得力を与えている。著者の文体はとてもカジュアルだが、示唆している内容はとても深い。前作『人生ドラクエ化マニュアル』を読んだ方もそうでない方も、読み進めていくうちに、心の中の霧がどんどん晴れていくような感覚を味わえるだろう。 (下良果林)

著者情報

JUNZO

 大学4年時、ゲームメーカー4社の面接試験を受け、エニックスに就職。エニックスで仕事をしている最中に、人生ゲーム化理論を発見。「人様のテレビゲームを作ってる場合じゃない!自分の人生をゲーム化するほうが先決だ!」と気づき、エニックスに辞表を提出し独立。独立後は、情報誌創刊、電子ペット企画開発、銀座で占いビジネス展開、商品評価サイト企画運営、著書出版などなど……あらゆるゲーム目的(やりたいこと)を楽しみながら全て実現させる。そして自ら編み出した「人生ゲーム化理論」を自分だけのものにするのは、もったいないと気づき、新たに「本として出版!」というゲーム目的を設定し、実際には『人生ドラクエ化マニュアル』が出版された。つまり、「人生ゲーム化理論」は単なる空論ではなく、著書の体験に裏打ちされた実論なのだ。第1弾がゲームファンを中心に熱狂的に支持され、それを受けて第2弾となる本著『人生ドラクエ化マニュアルII』が出版された。 

評点(5点満点)

本書の要点

・ゲームの三大要素は、「目的」「ルール」「敵」だ。人生とは、血沸き肉躍る目的を自ら設定し、独自ルールを見極めながら、難題を攻略することに楽しみを見出すゲームである。

・興味のおもむくままに行動することで、いつか「これだ」と思える目的に出合うことができる。

・アイディアは、テーマとヒントの組み合わせによってはじめて生まれるものだ。ヒントを探す旅こそが重要である。

・「今ある時間の再配分」といった効率化を取り入れることで、「時間がない」という課題を克服できる。

要約本文

■人生ドラクエ化理論誕生物語
◇ゲームとは何か

 大手ゲームメーカー入社初日、著者は上司から「ゲームとは?」というテーマでレポートを作成するよう指示された。しかし、ゲームについて定義づけられそうな哲学書など見つからない。そこでまず、「遊び」に関する哲学書『ホモ・ルーデンス』(ホイジンガ著)と『遊びと人間』(カイヨワ著)を参考とした。

 『ホモ・ルーデンス』では、遊びには「自分で決めた規則」があり、プレイヤーの特徴はルールを守り、競争的であることだと書かれていた。そして、遊びとは何かを求める闘争、もしくは何かをあらわす表現のいずれかであると述べられている。また、『遊びと人間』においても、遊びは規則のある活動とされ、「競争」に分類される遊びも存在すると語られている。次に、ゲーム「ドラゴンクエスト(以下ドラクエ)」のマニュアルと、上記の本を見比べ、類似点を探した。

 その後、著者は、「ゲームとは楽しいもの」という要素を加え、ゲームとは「目的を達成するためのルールに基づいた敵との楽しい闘い」であると定義した。例えばゲームのドラクエにこの定義を当てはめると、ゲーム上の地名アレフガルドの平和を取り戻すという「目的」を達成するために、独自の「ルール」に基づいた「敵」との闘いを楽しむことだと説明できる。

人生を楽しむための考え方

 ゲームの三大要素は「目的」「ルール」「敵」である。これらの要素を人生にも当てはめてみると、どのような障害に遭遇しようとも悲観的にならず、むしろその攻略に楽しさを見出すことができる。もちろん、ゲームの目的そのものに面白さを感じられないと、ゲームを楽しむことはできない。だからこそ、血沸き肉躍る目的設定が重要となる。

 しかし、ドラクエと人生には決定的な違いもある。それは、目的を自分で設定、変更できること、プレイ時間に制限があり寿命が尽きたら当然継続不可となることである。さらに、人生においては、負けても「こうやってはダメだ」という経験値が積み重なり、敵に勝っても負けても経験値がプラスに転じる。ならば、どんどん行動し、プレイを楽しむしかない。

 つまり、人生をゲーム化して楽しむには、特有のルールを見極めながら、襲いかかる難題を攻略しがいのあるパズルやモンスターととらえ、負けを恐れずに闘いに臨めばよいというわけだ。

■「自分の人生」を生きるために
◇死への恐怖は解消できる

 人生という名のゲームには、具体的にどのような敵が出現するのだろうか。

 著者が人生で初めて遭遇した敵は、「死の恐怖」である。人間は生まれてきたからには確実に死を迎える。死に対するネガティブな感情のひとつに「どうせ死ぬのなら、生きることに何の意味があるのか」というものがある。しかし、先述した通り、人生というゲームの目的は自分で設定でき、途中で何度でも変更可能だ。そして、生きる意味とは、自ら設定したワクワクする目的を達成することなのだ。

「死んだら何もかも終わりではないか」という考え方もある。確かに、死後の世界を体験した人間など誰ひとりとしておらず、死後の世界について明らかな答えはない。しかし、それなら逆に、自分が生まれる前のことを想像してみてほしい。体験したことがない状態を死と定義すれば、この世に存在する前も死を味わっていたととらえられる。すなわち、「人は誰しも死を体験したことがある」といえるのではないか。そう考えれば、死は怖いものではなくなるだろう。

◇血沸き肉躍る目的の見つけ方

 自分が心からやりたいと思えることを見つける方法は、はたしてあるのだろうか。

 有名なカーネル・サンダースは、陸軍を除隊後、ペンキ塗りから農場仕事、路面電車の車掌、保険外交員など実に40もの仕事を片っ端から試した。そして62歳になったとき、ようやく「ケンタッキーフライドチキンを世界に広める」という人生の目的とめぐりあった。それまでの豊富な職業経験(経験値)は、ケンタッキーフライドチキンを展開するうえで、非常に役立ったのである。どんなことでもチャレンジすれば、人生経験を積むという点では必ずプラスにつながっている。

 著者は、現時点で「これだ!」と思える人生の目的がまったく見えていなかったとしても、不安になる必要はないと説いている。関心のあることや思いついたことは、片っ端から手を出すとよい。行動を起こしてはじめて、その関心ごとや思いついたことに自分がどれだけのめり込めるかがわかってくる。関心が持てないことでもひとまず着手すれば、意外に面白いと思える場合もあるはずだ。

■迷いの断ち切り方
◇展開が読める人生はつまらない

 著者は大学を卒業した当時、「卒業したら企業に就職するのが当然」という考えのもと、ゲーム会社に就職を決めた。そして会社員時代に人生ゲーム化理論を発見し、自らの人生をゲームのように楽しむために独立を計画した。ところが、独立を検討し始めるとすぐに「上手くいくのだろうか」という不安にさいなまれるようになった。

 そんな中で劇的な出合いを果たしたのが、山田太一の脚本「早春スケッチブック」に登場する台詞だ。この台詞では、体裁のいい仕事に就いて家族を作り、平和な暮らしをするという、多くの人が人生の目的としていることを「くだらない」と切り捨てている。この台詞を知ったとき、著者が信じ切っていた「平和な暮らしこそが幸せ」という価値観が、根底から崩れ去った。それと同時に、自らのゲーム理論に引き寄せてこう思ったという。「ゲームにせよ小説や映画にせよ、今後の展開が読めないからこそ面白いのだ」。

 面白い人生を送りたいなら、不安定な状況をネガティブにとらえず、むしろ「刺激的だ」と思って楽しむしかない。

◇見栄や世間体はさっさと捨てろ

「上手くいかなくなったら、周囲から白い目で見られるのではないか」と考え、失敗を恐れる人は少なくないだろう。ゲームでは、どんなに失敗しようと、自分以外にその様子を見ている人間は誰もいない。では、人生ではどうだろう。著者は独立後、数々の失敗を重ねてきたが、失敗の回数を数えている人はひとりもいなかった。誰もが、自分のことで手一杯であり、他人に意識を向ける余裕などないのだ。

 著者が「見栄や世間体」から解放されたのは、それらが過剰な自意識によって生みだされた幻想でしかないと気づいたからである。あるはずもないものの存在に怯え、失敗を恐れるあまり行動を起こさないのは実にもったいない。

 結局のところ、寿命が尽きれば人間はこの世から消滅する。それなら、見栄や世間体を気にせず、のびのびと楽しく生きるほうがよい。「旅の恥は掻き捨て」と言うが、人生の恥も掻き捨てなのだ。

■【必読ポイント!】
■人生というゲームを楽しむために
◇アイディアを生み出すにはヒント探しに注力せよ

 著者は独立後、1000本ノックのようにアイディアを出しては、その中から最良と思えるものを選ぼうと考えていた。しかし、アイディアはそうたやすく生まれるものではなく、すぐに行き詰まってしまった。

 アイディアとは、自分が取り組もうとしている「テーマ」と、次々に目に入ってくる「ヒント」を組み合わせることで生まれるものだ。グリコ「プッチンプリン」の独特な容器を例にとろう。グリコの開発部員は、プリンを簡単に取り出せるプラスチック容器をつくろうと試行錯誤していた。ある日、喫茶店の調理場で料理人が業務用のゼリー容器にキリで穴を開けて中身を取り出そうとしている様子が、開発部員の目に飛び込んできた。プリンを容易に取り出す方法というテーマと、料理人が容器に穴を開けるというヒントが組み合わさり、プッチンプリン独自の容器というアイディアが生まれた瞬間である。

 ヒントに巡り合うには、さまざまな人に意見を聞く、現実世界やネット上で調べるといった「ヒント探しの旅」が欠かせない。あたかも探偵になったような気分で、謎解きを楽しむことを著者は勧めている。もしアイディアが出てこないとしたら、才能がないのではなく、ヒントと巡り合うための冒険量が不足しているだけなのである。

◇「時間がない!」を攻略するための方法

 時間に追われている読者は少なくないだろう。しかし、どんなに多忙な職業に就いていても、人生の目的を達成するための時間を捻出することはできる。

 著者の友人は、高校の物理教師で多忙を極めながらも、著書を10冊も出版している。彼は「多くの人に科学をもっと身近に感じてもらう」という人生の目的を設定し、書籍の執筆という方法をとった。彼が最初にとりかかったのは、仕事の交通整理だった。仕事とプライベートを分けずに行うべき作業をすべて洗い出し、リスト化することで、同時進行できる作業を明確にして並行で行うようにしたのだ。このリストを見直せば、学校に出社した瞬間に何をすべきか把握できるようになったという。

 そして彼は、やる必要がないと感じた作業を、思い切って手放した。さらには、文書作成や教材研究といった創造的な作業は頭が冴える午前中に行うなどの工夫を凝らした結果、執筆の時間を日常に上手く溶け込ませることができるようになったという。

 この作戦のミソは、「原稿執筆の時間を増やす」という方法をとらずに、「今ある時間の再配分」と「生物の生理に合わせた時間配分」という攻略法をとったことである。時間を増やすことには限界があるため、上記のような効率化により、大幅な時間短縮をめざすことが望ましい。

一読のすすめ

 著者は、八方塞がりで目の前が真っ暗になったとき、金欠、無気力に陥ったときなど、困難を克服するための方法を数多く紹介している。生きる意味に悩んだり、憂鬱さから抜け出せなかったりしている多くの人に、リフレッシュを兼ねて読んでほしい一冊だ。

(記事提供:10分で読める要約サービス flier