通信機器業界で、世界三大企業に数えられるまでに成長した中国・華為技術(ファーウェイ)。潤沢なキャッシュを元手に多額の開発投資を続け、“政治リスク”という事業の阻害要因も顕在化し始めた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)

 中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の躍進が続いている。2015年12月期の連結売上高は、前年比37%増の3950億元(約6兆円)、営業利益は同33%増の458億元(約7000億円)だった(表(1))。

 年間で493億元(約7600億円)もの営業キャッシュフローを創出し、現預金から有利子負債を差し引いたネットキャッシュは960億元(約1.4兆円)を超える、中国屈指の「キャッシュリッチ」企業でもある。

 ファーウェイは、日本では「ポケットWi-Fi」やスマートフォンといった携帯端末の会社という印象が圧倒的に強いが、そうした高収益を支えているのは、実は通信事業者向けのネットワーク事業だ。

 同社のネットワーク事業は、主に各国の通信キャリアと連携し、携帯電話などの基地局の整備や運用をするもので、連結売上高の6割を占める中核事業だ(図(2))。

 お膝元の中国だけでなく、日本を含めたアジア、欧州、中東、アフリカ地域など140カ国以上で1500拠点の第4世代(4G)ネットワークをサポートしているという。

 電話交換機の開発からスタートした同社が、設立からわずか30年近くで、17万人もの従業員を抱える通信機器会社に成長した要因は大きく二つに分けられる。

 一つは、潤沢なキャッシュを元手にした研究開発への積極投資だ。従業員の約半数となる7万9000人が通信や端末の研究開発に従事しており、毎年売上高の15%以上を開発投資に費やす(図(3))。

 中でも今力を入れているのが、次世代高速移動通信の5Gの研究だ。スマートフォンの普及や、全てのモノがインターネットにつながる「IoT」化によって、通信量は今後も急拡大する見通しで、日本では目下、20年の商用化に向けて、NTTドコモなどと共同実験を進めている。

 通信関連の技術を中心に、国際特許の取得にも余念がない。

 すでに5万件以上の特許を保有しており、15年には新たに3898件の特許を申請し、企業別では14年に続いて世界で最多だったという。