本の読み方・買い方はどう変わるのか?<br />「電子書籍」の未来を探る入門書が登場

 この10年で、全国の書店数は約3割減っています。特に、中小書店の経営は苦しいようです。

 理由の1つは、商品が回ってこないから。2009年、新刊書籍は7万8555点も発行されました。しかし、今ほとんどの書籍は初版部数を絞っていて、大作家の話題作なら2万~3万部ということもあるでしょうが、普通は多くて5000部、大体2000~3000部がざらです。

 一方、減ったとはいえ全国に書店は1万5000店あります。これでは、小さい書店には新刊本は届きません。

 店頭に届いたとしても、年間8万点弱も刊行されるわけですから、書店の棚に並ぶのはほんの短いあいだです。書店の棚は物理的に有限ですから、どんどん新しい本に入れ替えていかなければなりません。

 棚からあぶれた本は出版社に返品される仕組みになっています。いま、そうして返品される本は全体の40%にものぼっています。読者と出会えずに消えてしまう本も、たくさんあるということがわかります。

 なぜ、こんなことになっているのか、その理由は今週号をお読みください。そこには、出版業界が抱える構造的な問題が横たわっています。

 ただ、こうした閉塞感を吹き飛ばす起爆剤になるかもしれない動きがあります。それが話題の電子書籍。今号は電子書籍の最前線をテーマにした特集です。

 電子の世界なら物流費、紙代、印刷代もかかりません。「読者まで本が届かない」という問題はなくなります。在庫を持つ必要がありませんし、もはや絶版という概念もなくなるでしょう。

 そして、なにより電子書籍は読者に新しい読書体験をもたらしてくれます。たとえば、インターネットやソーシャルメディアを利用して1冊の本をみんなで読む「ソーシャルリーディング」という楽しみ方は、電子書籍ならではの読書スタイルかもしれません。

 新しい読書のスタイルは、新しい読者を生む可能性があります。電子書籍は紙の本の市場を奪うものではなく、読書の幅を広げるものだと考えています。電子書籍の登場によって、本と出会う人が今よりもっと増えてほしい、そんなつもりで特集を組みました。

 ですから、これからの読書はどう変わるのか、本の選び方、買い方はどうなるのか、読者の視点に立って考えてみました。アマゾンのキンドル、ソニーリーダー、シャープのガラパゴス、サムスンのギャラクシー、アップルのiPadなどなど、最新の電子書籍端末を多数紹介するほか、電子書籍ストアやビューアーの比較に力を入れています。

 また、本や雑誌を裁断機でバラバラにして、スキャナーで読み取り、そのデータをiPadやキンドルなどに転送して読むという、つまり電子書籍を自作する人が増えています。この行為を俗に“自炊”と呼びますが、本特集では「自炊の仕方」についても多くのページを割きました。自炊にまつわる法律(著作権)の問題にも触れています。

 徹底的に「読者」を主役に据えた内容にしたつもりですが、もちろん電子書籍時代に書店、取次、そして出版社や編集者はどのように変わるのか、どのような役割が求められるのか、というテーマにも切り込んでいます。その結果、64ページもの大特集になってしまいました。

 読書の秋、一風変わった「読書」の特集をお楽しみください。

(『週刊ダイヤモンド』副編集長 深澤 献)