日本でも稀有な経歴のホテルマンで、前ザ・リッツ・カールトン・ホテル日本支社長の高野登氏。高野氏しか語れない、文法ハチャメチャでも「本当に使える!体当たり英語」の極意を語る5回連載の3回目。このたび、『リッツ・カールトンとBARで学んだ高野式イングリッシュ』を刊行した高野氏。昼は表の英語、夜はストリートバーで裏の英語を駆使し、ストリート・スマートな人生を歩んできた。どうやってアメリカで20年も、“体当たり英語”で生き抜いてきたのか?(構成:藤吉豊、撮影:橋詰芳房)

アングラバーで、自分の思いがストレートに伝わる表現とは?

  マンハッタンの地下鉄14丁目駅の近く、当時の私のアパートから近いところに“BAR Underground”(以下、略して「アングラ」)はありました。

【第3回】いまだから明かす<br />「アングラバー」で学んだ<br />“ちょっとアブナイ”英語高野 登(Noboru Takano)
人とホスピタリティ研究所所長。前ザ・リッツ・カールトン・ホテル日本支社長。1953年長野県戸隠生まれ。ホテルスクール卒業後、単身アメリカに渡り、20年間、ヒルトン、プラザホテルなどでホテルマンとして活躍。90年にはリッツ・カールトンの創業メンバーとともに開業に尽力。94年以降、日本支社長として、大阪と東京の開業をサポート。日本にリッツ・カールトンブランドを根づかせる。

「ザ・キタノ・ニューヨーク」の仕事を終えて帰宅する夜の11時すぎには、ユニークな客たちでにぎわっていました。
  ある日、開店準備中の「アングラ」をのぞき込むと、バーテンダーと目が合いました。
  彼はニヤリと微笑み、片手で私を手招きしました。

「Hi, I see you every once in a while. You live around here?」
(やあ、ときどき見かけるね。この辺に住んでいるのかい?)

  この日から私は、「アングラ」に通い始めるようになります。

「英語は、ただ言葉を話そうとしてもダメ。『どういう想いを伝えたいのか』という目的がはっきりしないと、相手に通じない」
  このことを教えてくれたのは、「アングラ」のバーテンダー、ジミーでした。
  ニューヨークに着いたばかりの私は、頭のなかにある「教科書英語」を思い浮かべて、ジミーや常連客に、

「How are you?」
「How do you do?」
「Good evening.」

  と、かしこまって挨拶をしていたのですが、ある日、ジミーにたしなめられたのです。