[フォーデイズ株式会社代表取締役社長]和田佳子氏[社会経済学者・エコノミスト]齋藤精一郎氏

和田:東日本大震災から半年が経ちましたが、あの日以来、日本社会が大きく変質したことを実感しています。また、アメリカを始めとする世界経済も激しく揺れ動いており、社会事象すべてがまさに「不確実性の時代」を迎えているように思います。こうした状況下で、どのように会社経営を進めていったらよいのか、考えがまとまらず不安になります。
齋藤:おっしゃるように、今は不確実な時代に突入しているといっていいでしょう。世界情勢も厳しい局面にありますが、何よりも日本では3月11日に未曽有の大震災が発生しました。大震災はもちろん、大変つらい出来事でしたが、悲しく耐え難い思いがある一方で、私たちにさまざまな気づきをもたらしてくれたという一面もあったと思います。それは、豊かな社会に生きてきた我々が原点に立ち返るということです。これまで無視してきたものや、過大に評価してきたことが崩れ、もとの素の人間に戻り、近代の思想を振り返ることにつながる「気づき」だと思います。
歴史上を見れば、1755年11月1日に発生したリスボン大地震がいい先例でしょう。ポルトガルのリスボンで当時6万人もの人々が亡くなる大災害でした。あの大災害によってヨーロッパの当時の啓蒙思想や哲学、人間のあり方が、ガラッと変わったといわれています。大きな事件によってさまざまなことがリセットされるということは、これまでにも起きているのです。図らずも、このような時代に遭遇した経営者の皆さんが不安を持つのは当たり前です。
和田:悩みは私だけのものではなく、多くの経営者共通の悩みでもあるのですね。今回の大震災に際して、私どもも会員さんに義捐金を募り、会社ならびに私個人や社員とともに、産経新聞社を通して寄付をいたしました。
また、私どもにも東北地方に大勢の会員さんがいらっしゃいますので、少しでもお手伝いしたいという気持ちから、ボランティアを募って福島県、宮城県、岩手県へ参りました。支援物資に加えて当社の主力商品である核酸ドリンクを届けたのは無論のことなのですが、意外にも化粧品が大好評でした。どんなに大変なときでも、いえ、つらい時だからこそ、化粧水のうるおいが必要だったのだということは、改めて提供する商品の価値を知らされた思いがします。
さらに、このところ東北4県での核酸ドリンクの売上が震災前を上回るほど伸びていて、また驚いています。以前から、景気が悪くなってからのほうが、健康に関心を持つ人が増えているように感じてはいたのですが、それと同じ傾向かもしれません。
齋藤:基本に立ち返る、ということからいえば、人の基本はまさしく健康にあるわけなので、さまざまな欲求が満たされた後に立ち返るのは健康ということですね。また、景気が悪くなって先行きに不安を感じ、病院に行く負担にも敏感になって、健康に注意するようになるという流れも強まっているのではありませんか。
原点から出直そうという機運が今こそ高まっている時期です。健康の大事さ、命の大切さが見直されている今は、健康食品の業界にとってひとつの機会だともいえるでしょう。あるいは曲がり角です。被災地で御社の商品に出会った人の中でも、健康の重要性を実感した人が増えてきているのでしょう。

和田:
当社はアジア通貨危機が発生した1997年に創業しまして、核酸ドリンクを発売した翌年の2001年から急速に売り上げが伸び、11期連続の増収を達成して今に至っています。現在では会員さんが26万人にまで増え、売上高は332億円になりました。しかしながら、この先行き不透明な時代に向けて、おっしゃるように曲がり角に立っていることを実感しています。
と申しますのも、当社はネットワークビジネスの販売スタイルを取っています。ネットワークビジネスはユーザーである会員さんが商品を他の人に伝えてユーザーを開拓していく商法です。こういうとアメリカ型のネットワークビジネスを想像される方が多く、一くくりに投機的なビジネスと誤解されるという風評被害もあります。
齋藤:
なるほど、そういう悩みがあるのですね。しかし何よりもまず大事なことは、いい商品、誰にもまねできない優れた商品を開発することです。
販売システムはその次に大事なのです。よい商品をつくれば、おのずとそれに最も適した販売方法が決まり、流通していくものだと思います。いいものづくりをし、基本的な経営精神がきちっとしていれば、風評被害はだんだんなくなるものです。
和田:
はい。当社ではよりよい商品づくりのために、主成分である核酸についての学術研究にも注力し主力商品である核酸ドリンクは、12年で6回のバージョンアップを実施しました。また、商品の販売システムは独自の流通スタイルで、ユーザー自身が体験し納得して周りの方に伝えていく形です。ただし、伝えるだけで商品取引における受注・発送・集金はすべて本社が直接実施します。そのため会員さん同士は相手に思いやりをもって伝えられ、お互いに負担なくきちんと したコミュニケーションをとっていけます。
そしてこの考え方は、日本の相互扶助社会のネットワークにぴったりだと思い、私はこの流通スタイルを「新・日本型ビジネスモデル」と名づけました。でもまだ製造者、販売者、会員にとって「三方よし」のビジネスモデルとして社会的認知を高めるのが、なかなか難しいのが現状です。
齋藤:「三方よし」は、近江商人の商いの奥義ですが、その精神を実現しようというのは非常にすばらしいと思います。これからの販売方法には、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)が不可欠なのは言うまでもありませんが、私はそこに人間が介在するべきだと思ってきました。
SNSにH(ヒューマン)がつく、あえていえば「HSNS」です。ともすると、今はインターネット上のSNSだけに何事も終始してしまいがちで、そこに生身の人間であるHが抜けています。オンライン上だけでやるのは汎用性のある価格で勝負するような普及品でしょう。高付加価値な商品や、人づてに内容をくわしく聞いて各自が判断するような商品には、人を介して伝えないと、それを本当に必要とする人にしっかりと広がっていかないと思います。バーチャルなSNSとヒューマンを組み合わせたとき、このような商品は非常にいい相乗効果を発揮すると思います。ですから、和田さんが取り組んできた「新・日本型ビジネスモデル」はとてもいい考え方だと思います。
和田:
そうおっしゃっていただくと非常にうれしいと同時に、自信が持てます。
私は「商い」の原点はフェース・トゥー・フェースにあると信じています。日本でビジネスをするなら、日本人同士の暗黙の了解とか配慮というのもあると思うのですが、だからといって日本的なコミュニケーションだけでもダメだと思っています。パーソナルなコミュニケーションと新しいシステムをどう融合させていくかが課題です。私はこれを、ネットワークビジネス全体の取り組み課題だと考えるのですが、HSNSのスタイルを、業界がそろって構築していくことは難しいことです。
齋藤:日本のことわざに「目は口ほどにモノをいう」というのがありますね。これは、はっきりと発言するのではなく、日本人ならではの、暗黙のうちに行うコミュニケーションを指しています。日本人は欧米のアングロサクソンの人たちに比べると、マニュアル化や標準化することが苦手で、より柔軟な人間関係を重視する傾向があります。マニュアル化はそれなりに便利で合理的な面もありますから、それも取り入れ、その上に日本人らしい「目は口ほどに」の、非形式的な情報が加われば、効果百倍になると思います。
もちろん、日本的なコミュニケーションが強くなりすぎてしまうと、弊害も生じるでしょうし、逆に欧米のシステムの中に日本的なあいまいなコミュニケーションを取り入れて、そのまま運用してしまっても、さまざまな問題や誤解が生じるかもしれません。ヒューマンなコミュニケーション関係に形式化を取り入れて、より効率的で信頼性の高い、ネットワークシステムを構築できれば、まさに「鬼に金棒」でしょう。
和田: 核酸ドリンクは表面的な美とか健康ではなく、身体の内側から若々しく健康に、という思いでこれまで取り組んできました。おかげさまで、美容やアンチエイジングだけでなく、健康に自信のない方からも感謝のお手紙を多数頂戴するなど、ご好評いただいています。会員さんからお話を伺う機会も多く、そんななかで、お肌にいいとか髪が元気になるからと、ドリンクをお顔や頭皮に塗っていますとおっしゃる方が何人もいらしたものですから、体の外側からアプローチする商品の必要を感じたのです。ですから、化粧品を開発したのも、核酸に対するニーズの広がりに応えたものなのです。きれいになりたいと願うことは若さの大切な要素。男性にも外見にこだわる努力をしていただきたいと期待しています。
齋藤:健康のありがたみが見直されている今、御社が早くから核酸という成分に着目して、このような健康ドリンクをつくり出されたことはすばらしいことです。だんだんと物事の本質が問われるようになってきて、一口にリラクゼーションといっても、単にマッサージをするとかそういうことではなくなり、本質的にどう根本部分を改善していくかということが問われるようになってきています。日本は65歳以上の人口が23%という高齢化社会。総じて元気な老人である彼らは、長生きして人生を謳歌することを願っている。その興味を引くものとして、健康、美容、アンチエイジングが大きな比重を占めています。健康全般によいというサプリメントは男女共用ですが、高齢者向けの美容やヘアケアは、女性向けばかりで、男性向けにはそういったものがほとんどありませんから、男性にも女性にもいい商品が求められていますね。
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齋藤精一郎氏さいとう せいいちろう
1940年東京生れ。63年東京大学経済学部卒後、日本銀行入行。その後、72年立教大学社会学部助教授、73年同大学社会学部教授となり、現在に至る。専門は社会経済・経済政策・金融論。79年にガルブレイスの『不確実性の時代』(講談社文庫)を訳出し、ベストセラーとなる。主な著書に『金融動乱』(講談社)『「10年不況」脱却のシナリオ』 (集英社新書)『パワーレスエコノミー―2010年代「憂鬱の靄」とその先の「光」』(日本経済新聞出版社)。
和田佳子氏わだ けいこ
明治大学政経学部卒。化粧品会社ノエビア勤務13年等を経て、1997年フォーデイズ株式会社を創業。「ナチュラルDNコラーゲン」の商品開発と、既存のネットワーク系ビジネスとは一線を画す独自の販売システムにより、2010年まで11期連続増収を達成。年商330億円を超える企業のリーダーとして現在に至る。著書に『なぜ9割もリピーターになるのか』(ダイヤモンド社)。