「いったい何が起きているのかわからなかった」
さる5月29日、アデランスホールディングスの第39回定時株主総会に出席したある株主は、苦笑する。
この日、関係者を仰天させる「大事件」が起きた。
総会では、業績報告と質疑応答が終わった後、剰余金の処分、取締役9名の選任、監査役3名の選任という3議案の決議に移った。世間の多くの株主総会がそうであるように、「今年もシャンシャンで終わるはず」と経営陣は思っていたことだろう。
しかし第2号議案の「取締役の選任決議」において、予想だにしない事態が発生した。なんと、社外取締役を除く、岡本孝善社長以下7名の再任が全て否決されたのである。要するに、これまでの主な役員全員が「クビ」を宣告されたということだ。
そんな異常事態が起きたにもかかわらず、「アデランス側は出席者に対して、その場で詳しい説明をしようとしなかった」(同株主)という。「第1号議案は可決されました。第2号議案は否決されました。第3号議案は可決されました・・・」。このように矢継ぎ早に結果が伝えられただけで、その場はあっという間に終わった。
「否決された第2号議案って、何だっけ?」「結局、第2号議案は可決されたの?」
総会終了後に、内容を確認し合う出席者の姿も見えたという。
この株主は、その後のアデランスの発表を聞いて、初めて「取締役再任否決」という事態の深刻さを認識した。しかしそれは、賛成票と反対票の割合さえ公表されない「申し訳程度」の発表に過ぎなかった。
「企業にとって都合が悪い事実は、総会の出席者にさえロクに説明しないのか」──開いた口が塞がらないのも無理はない。