今年1月末に発覚した中国製冷凍餃子への農薬混入事件。その真相はいまだ解明されず、冷凍食品に対する不信感は消えそうにない。全国に1500
社もある冷食メーカーは悲鳴を上げている。売り上げ減少、コスト上昇のダブルパンチで追い詰められた業界各社の再編・淘汰が始まる公算は大きい。
3月末の土曜日の夕方、晩ご飯の準備で買い物客がごった返す首都圏の大手食品スーパー。冷凍食品売り場には「全品5割引」のノボリが立ち、6割引きの値札が付いたものまである。
だが、売り場に客はほとんどいない。たまに現れる主婦が手にするのは冷凍うどんや国産の冷凍野菜くらい。「国内産の原料を使って国内で作っております」と書かれていても、冷凍餃子などの冷凍調理食品には見向きもしない。
翌週末に同じスーパーに行ってみた。冷食は全品4割引きに値上げされており、目玉商品もなくなっていた。
「5割引き、6割引きにしたって全然売れないのだから、値段なんていくらでも一緒。ならば、少しでも利幅を確保したいってことですよ」(業界関係者)
JTは売り上げ9割減
厳しい信頼回復の道
今年1月30日に発覚した中国製冷凍餃子の農薬混入発覚から3ヵ月、冷食の販売不振は今も続いている。
事件直後の2月、大手5社(加ト吉、ニチレイ、マルハニチロホールディングス、味の素、日本水産)の家庭用冷食売り上げは、軒並み前年同月比で20~25%も落ち込んだ。
事件の原因となった冷凍餃子を子会社が販売していた日本たばこ産業(JT)の打撃は深刻である。
2月の冷食売上高は対前年同月比で、家庭用90%減、業務用70%減という惨状だ。これを受けて海外12工場はすべて操業停止となり、国内工場でも一部のラインが休止している。