政府、日本銀行が相次いで景気後退を認めた。資源価格高騰が企業・家計の所得を奪い、いざなぎ景気を超える戦後最長の景気拡大は終わった。米国経済回復が遅れれば来年度いっぱい後退局面が続く公算もある。政府は総合経済対策を策定中だが、赤字を拡大させるだけの安易な財政出動は将来に禍根を残す。

6年にわたる景気拡大に幕

 中小企業が悲鳴を上げ始めたのは、昨年の秋口からだった。彼らを追い込んでいたのは原材料高だ。製品価格への転嫁ができず、苦境に陥る会社が目立ち始めた。こうした中小企業の業況悪化は振り返れば景気の転換点を意味していた。

 2002年1月から始まった今回の景気拡大の期間は、「いざなぎ景気」の57ヵ月を抜いて戦後最長を記録していたが、その景気拡大もついに終焉を迎えた(上のグラフ)。

 8月7日に、政府は月例経済報告で景気が弱含みであるとの現状認識を示し、実質的に景気が後退局面に入ったことを認めた。同月19日の日本銀行の金融政策決定会合でも、景気は停滞しているとの声明を発表した。日銀が景気認識に停滞という言葉を使うのは、なんと10年ぶりである。

 景気はいつ後退局面に入ったのか。「景気動向指数に採用されている11の指標のうち過半数の6つがピークアウトした07年11月が景気の山となる可能性が高い」(矢野和彦・みずほ総合研究所経済調査部長)。今回の景気拡大期間は71ヵ月という計算になる。

「戦後最長の景気拡大」がついに終焉!
悪要因は資源価格の高騰

 今回の景気の腰を折ったのは、原油、穀物をはじめとする資源価格高騰である。

 資源価格高騰は原材料価格を押し上げ、中小企業の業績を直撃した。日本銀行短期経済観測調査(日銀短観)によれば、中小企業の07年度経常利益は前年度比4.9%減。6期ぶりの減益となった。また、原材料高騰は大企業の収益も圧迫する。今年6月調査の日銀短観によると、08年度の大企業の経常利益は前年度比7.0%減となり、7期ぶりの減益となる見通しだ。企業収益悪化を受けて07年度の設備投資は前年度比0.1%減となった。

 原材料高に苦しみながらも価格転嫁を我慢していた企業も、昨年後半からは音を上げ始め、食料品を中心とした値上げが相次いだ。一方で、業績悪化に対応して企業は賃上げを抑制し続けた。この結果、家計の購買力が低下し、今年4~6月期の個人消費は前期比年率換算で1.9%減となった。