11月下旬、世界をドバイショックが襲った。政府系持ち株会社などによる巨額の債務不履行の可能性が表面化、各国の金融市場に激震が走ったのだ。日本も例外でなく、株急落に加えて円が急騰、現地で前のめりで開発にかかわってきたスーパーゼネコンの経営にも危機が忍び寄る。ドバイショックの影響を追う。

 ドバイ政府が11月25日に出した表明は、政府系持ち株会社、ドバイ・ワールドと系列の不動産開発会社、ナキールが債務の返済延期を債権者に求めるというもの。12月1日にはグループのナキール、リミットレスの2社で債務額約260億ドル(約2兆3000億円)となることが発表された。

 近年、著しい成長センターとして、世界中のマネーをかき集めてきたドバイの危機に、主要市場は過敏に反応する。

 第一報の翌日の26日、27日、主要市場の株価は下落、為替市場では、「ドバイへの融資を多く抱える銀行は欧州に多い」(中空麻奈・BNPパリバ証券クレジット調査部長)ことから、ユーロが売り込まれた。市場関係者にとっては、ドバイ・ワールドの債務返済延期は寝耳に水。投資家はいっせいにリスク資産への投資を手仕舞い、市場は混乱したのである。ここで割を食ったのが日本経済だ。

 質への逃避から円が買われ、27日は一時1ドル=84円台を付けることになる。金融危機後の落ち込みからようやく回復しつつある輸出企業にとって円高は大打撃。27日、日経平均株価終値は前日比301円も暴落する。

 政権を取ったばかりの民主党政権にとって、世界経済の荒波にもまれる試練の場となった。週末に政府首脳が緊急会合を重ねるなど対応に追われる。これに日本銀行も呼応した。12月1日、臨時の金融政策決定会合を開催、量的緩和に舵を切る。国債などを担保に0.1%で期間3ヵ月の資金を10兆円供給するというものだった。

 しかし、日銀の緩和策は規模が小さいこともあり、円高抑制の効果はないと市場関係者に見切られた格好。現に、緩和策発表後、為替相場は円高に振れた。その後、株価が戻ったことで株式市場は落ち着きを取り戻しているものの、円高懸念は依然、消えていない。

 というのも、ドル安・円高はここ最近の趨勢だからだ。FRB(米連邦準備制度理事会)が、実質ゼロ金利政策を継続。これが、今年4月以降のドル安をもたらし、円の対ドルレートは90円台後半から80円台後半へと“段階”が変わった。

 今後も、雇用悪化に歯止めがかからない限りFRBはゼロ金利政策を続けるというのが市場のコンセンサス。失業率がピークを迎えるのは来年3月前後と見られ、それまでは円高は継続しそうだ。80~82円前後までは円高が進むと見る向きが多く、日本経済の重石となる。