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九電で日本初のプルサーマル開始
“展望なき先送り策”のあだ花か

九州電力は12月2日、玄海原子力発電所三号機で、国内初となるプルサーマルの営業運転を開始した。原発で燃やした後のプルトニウムを再利用する「核燃料サイクル」の歯車が計画から10年遅れて、一つ動き出した。だが、現場の負担や不安をよそに、最終ゴールはまったく見えない。

1975年に運転を開始した玄海原子力発電所。電気出力は、4基合わせて347.8万キロワット。周辺は民家が並び、畜産や農業にいそしむ住民の姿がある

 12月上旬、佐賀県玄海町。原子力発電所そばの墓地を掃除していた71歳の男性が重い口を開く。「『安全だ』と皆言うけど、そりゃ不安ですよ。昔は大反対した。でも、今はその九電に子どもが勤めているからね」。地元住民でつくる「玄海原発対策住民会議」の藤浦晧会長は「各集落に九電関係者がおり、まともに反対の声が出せない。沈黙の町だ」と述べる。

 人口約7000人の玄海町で原発関連事業が1000人を超える雇用を生む。原発があることで、これまでに国や県から電源立地関連の交付金など約240億円を受け取っている。年間予算規模約70億円に対し貯金に当たる基金が約120億円に積み上がった。

 岸本英雄・玄海町長は「佐賀のチベットといわれるほど貧しかったが、原発の交付金などで今は安定している」と言う。プルサーマルの見返りに30億円の核燃料サイクル交付金が入り、新エネPR施設や薬草園の建設などに充てる。

 玄海原発を訪ねた。内部は、作業員よりもガードマンや警察官の姿が目につく。荷物検査などのたび重なるチェックを受け、携帯電話も預けた。見学者向けに整備されたこぎれいな通路や展示物は、もはや無用の長物となっていた。テロ対策の厳重な警戒体制──窒息しそうな重苦しさだ。

 プルサーマル開始前は、今以上の異様な緊張に包まれていたという。事故など起こりえない場所で足を滑らせて骨折するなど、3件の労災が続いた。執行役員の村島正康・玄海原子力発電所長は「普段どおりやるようにお願いしたい」と下請けなどの協力会社に要請しなければならないほどだった。

 こうした関係者の緊迫感は、佐賀県民の抵抗ゆえなのかもしれない。一般の主婦らが主力となった市民団体は2007年、署名を集めてプルサーマルの賛否を問う県民投票条例制定の請求をした。県議会で否決されたが、活動を続けている佐賀市の石丸初美さんは「今でも、県民にはまともな説明がない」と憤る。「NO!プルサーマル佐賀ん会」(満岡聰共同代表)は今回、反対のため全国47万5000人の署名を集めている。

 当然、九電は地元対策に神経質にならざるをえない。玄海町に隣接する唐津市には10年4月、早稲田大学の系列校が開設される。九電は09年2月、開校資金の半分に当たる20億円を寄付すると発表した。九電としては過去最大の額だが、最終赤字へ転落しかねない時期に浮上した案件だった。「社内では、赤字決算で寄付となれば、『株主代表訴訟になる』という心配もあった。黒字になって安心した」(九電関係者)。

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