佐川急便グループは11月、傘下の貨物航空会社であるギャラクシーエアラインズを清算する。運航開始からわずか2年でピリオドを打つまでには、ギャラクシーへ出資した企業とのあいだに軋轢があり、今後の提携戦略に暗い影を落とす。ギャラクシーをめぐり何が起きたのか。スピード撤退の裏側を追った。
「今回の一件で佐川急便は社会的信用を失った」
ギャラクシーエアラインズの主要株主は怒りを隠さない。主要株主の多くは佐川急便グループの有力取引先でもある。今後の取引縮小にも発展しかねない状況にまで関係がこじれた経緯を説明するには、昨年末までさかのぼる必要がある。
佐川急便を中核とする持ち株会社のSGホールディングス(SGH)は2007年12月、ギャラクシーの株主各社を訪問し、ギャラクシーの07年度中間決算を報告するとともに、株式買い取りを申し出た。
ギャラクシーの資本金は50億円。SGHが自ら出資したのは55%。残り45%は10社が出資した。三井物産(出資比率15%)、日本航空(同10%)、住友商事(同7.5%)、海外新聞普及(OCS、同5%)などが主要株主に名を連ねた。「アジアの総合物流企業を目指す」という長期的な成長戦略が、物流事業を強化したい商社らに支持されたのだ。
06年10月に運航を開始したギャラクシーは、まず第1ステージとして国内で翌日配達可能な地域を拡大し、宅配便競合とのサービスの差別化を図った。自社でエアバスのA300型貨物専用機を2機保有し、羽田~北九州、羽田~那覇、関西~新千歳、羽田~新千歳の4路線に就航した。
が、07年度の中間期業績は大幅な赤字を計上した。機材の不具合や台風などで運休・欠航が増加したうえに燃油費が高騰。想定以上に整備・運航コストがふくらんだのだ。
SGHは株主に対し、08年度には債務超過に陥って大幅な減資・増資が必要になる可能性を伝え、時価すなわち出資額の3~4割で株式を買い取って、ギャラクシーを佐川グループのコストセンター(直接的に利益を生まない組織)にしたいと説明した。
突然の「ギャラクシーエアラインズ清算」
1年で見切る佐川に戸惑い憤る出資各社
「損だけ被って、手を引けというのか」
中長期スパンでの成長を見込んでいた主要株主勢は、就航からわずか1年での株式買い取り提案に驚きあきれた。買い取りに応じたのは、三井住友海上火災保険(出資比率5%)、佐川印刷(同2.1%)の2社のみだった。
半年後の今年5月、株式売却を退けた主要株主たちは耳を疑った。伝えられていたよりも1年早く07年度決算で21億円の債務超過に陥ったと知らされたのだ。株主各社は07年度に営業損失30億円を計上したことはすでに把握していたが、同年度は債務超過に至らないと認識していた。
「なんでいきなり債務超過になるんだ。株主に対する説明責任はどうなっているんだ」
債務超過を引き起こしたのは、“予定外”の会計厳格化だった。監査法人からの要求により、固定資産の減損処理および繰り延べ資産の一括償却が4月末に決まり、土壇場で24億円の特別損失を計上したのだ。