【第1回】 2009年10月15日
メディアは「かっちょいい絶望」の見本市会場でいいのか
日本の危機とアカデミック・ジャーナリズムの必要性
「日本はダメだ」「日本は終わった」と『絶望論』ばかりが唱えられる今、本当に私たちは将来を悲観・絶望したままでいいのか?
今回から5回にわたって、日本の政治・経済・社会、そして私たちがどこへ向かうのか、若手経済学者・社会学者たちの対談形式で、お届けする。第1回は、飯田泰之・駒沢大准教授と、芹沢一也氏、荻上チキ氏が語り合った。
長引く不況で、メディアは
「次の媒体」を育てていく体力がない
芹沢:以前から言論離れが嘆かれてはきましたが、それにもまして近年は、とても大きな制度改革が、何の専門知の裏づけもなしになされているという危機感がありました。どうも日本全体が「床屋談義」で変えられていっている。そこで、タコつぼ化している学問領域の垣根をこえて、普通の市井の人びとに身近なかたちで、良質な言論を届けることはできないかと思い立ったのです。アカデミック・ジャーナリズムとも呼ぶべき、アカデミックの知に支えられた社会的な言論をつくりだせないかと。
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| 芹沢一也 社会学者、株式会社シノドス代表取締役。1968年東京生まれ。専門は近代日本思想史、現代社会論。著書は『暴走するセキュリティ』 『犯罪不安社会』など多数。 |
そんなわけで、現在、ぼくたちはシノドスというレーベルのもとで活動しています。シノドスは2007年4月に、少人数制のセミナーをはじめたのがスタートでした。そのとき掲げたのが「知の交流スペース」というフレーズです。
荻上:長引く不況によって、どのメディアも逼迫した状況になりましたね。雑誌がなくなり、出版社がつぶれていくなか、「次の媒体」を育てていく体力が失われてしまっています。特にダメージが大きいのが、文芸や評論の世界。若手論客のほとんどが、インディーズ雑誌を自ら立ち上げたものだったり、ウェブ媒体を効果的に使ってきたひとだというのは、そうした状況を象徴しています。
芹沢:荻上さんはまさにそうした時代を体現している評論家ですね。そこで立ち上げから一年たってウェブでの展開を考えたとき、荻上さんをシノドスにお誘いしたんです。荻上さんが創刊したのがメールマガジン「αシノドス」です。知の最前線に立つ論者たちのセミナーを中心に、政治・経済から社会・文化にいたる知や情報を、メルマガというメディア(媒体)によって広い読者に届けようとしたわけですね。
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| 荻上チキ 評論家・批評家。1981年兵庫県生まれ。東京大学情報学環修士課程修了。テクスト論、メディア論が専門。著書は『ウェブ炎上』 『ネットいじめ』など多数。 |
ところでよく誤解されるのですが、ぼくたちの活動は紙媒体からウェブへ、などというものではありません。さまざまなインターフェイスを用意して、またほかのメディアとコラボーレートしながら、最適化されたかたちでコンテンツを届けようとしています。そうした試みのひとつとして、活動3年目となる今年の春に、光文社さんと組んで「シノドス・リーディングス」を2冊発刊しました。シノドス・リーディングスでは、飯田さんとタッグを組ませていただいたのですが、ぼくらのような人文・社会学系の人間と、実証系の経済学者が組むというのは、かつてなかったですよね。飯田さんには人文系の言論って、どのように映っていたのですか。
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