ブランド・マーケティング戦略の成果は、なぜ見えにくいのか?

「ブランド・マーケティング予算は増えているが、トップライン(売上高)への貢献が見えない」――。これは多くの経営層が共通して抱える悩みだ。

ブランドの認知・信頼向上が売り上げを押し上げるという理屈は正しくとも、実際に投じた予算が業績やKPI(重要業績評価指標)にどう寄与したかを判定するのは極めて難しい。

多額を投じるマス広告や、人材と最先端ソリューションをつぎ込むデジタルマーケティングが、投資に見合う成果を上げているかを正確に把握できている経営層は多くないだろう。

成果が見えにくい背景には、三つの構造的課題がある。

施策の多様化・細分化:非財務資本領域の施策を含めた「どのような施策が何に効いているか」の関連付けが困難になっており、営業指標/売り上げとのひも付けの整備とキードライバーの明確化が急務となっている。

ROI(投資対効果)意識の弱さ:営業部門に比べ歴史の浅いマーケティング部門では、広告代理店の提案のまま予算を投じる例も多く、「経営・事業戦略に沿った投資か」という使途の精査が十分でないケースも見られる。

収益視点での投資承認体制の不在:海外ではブランド・営業の上位にCRO(最高収益責任者)を置き、収益最大化の観点から投資を承認する体制が一般的だが、日本ではこうした体制構築が遅れている。

では、こうした課題認識を踏まえ、日本の企業の投資実態はどうなっているのか。

PwCコンサルティングが2026年1月に実施した調査(以下、本調査)の結果から、その詳細をひもといていく。

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マーケティング成熟度の高い企業ほど、ブランド戦略に注力している

本調査は、PwCコンサルティングが2026年1月、売上高500億円以上の企業の経営者、役員、CxOクラス、本部長・事業部長クラス403人を対象に実施した。

調査テーマは、「経営課題」「マーケティング成熟度」「マーケティング投資」「M&A」など複数にわたる。ここでは、売上高500億円以上の企業によるブランド・マーケティング投資の傾向や今後の意向が分かる「マーケティング投資」の調査結果を見てみよう。

本調査では、企業のマーケティング成熟度を体系的に評価するため、PwCコンサルティング独自のマーケティング成熟度モデルを分析フレームワークとして用いた。このモデルは、戦略から実行基盤、ガバナンスに至るまでを多角的に評価するもので、全9カテゴリー、32項目から構成される。まず、403人の回答の平均値から、マーケティング成熟度を「Very High(非常に高い)」「High(高い)」「Middle(中位)」「Low(低い)」の4段階に分類した上で、各設問への回答結果も分析した。

ブランド・マーケティング投資は売り上げにどう効いているのか。大企業403社のCxO調査が示す、成果を生む投資の優先順位出所:PwCコンサルティング「ブランド・マーケティングが拓く成果への道筋―マーケティング成熟度の経年比較と投資実態から見えた重要性―」(2026年5月) *各数値は小数第1位を四捨五入しているため、合計が100%とならない場合がある
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現状の重点投資領域についての問いでは、マーケティング成熟度ごとの違いが鮮明に表れており、「Very High」「High」では、「ブランド戦略・構築」に重点投資をしていると答えた企業が最も多かったのに対し、「Middle」「Low」では「人材」との回答が最多となった。

ブランド・マーケティング投資は売り上げにどう効いているのか。大企業403社のCxO調査が示す、成果を生む投資の優先順位出所:PwCコンサルティング「ブランド・マーケティングが拓く成果への道筋―マーケティング成熟度の経年比較と投資実態から見えた重要性―」(2026年5月)
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この結果を見る限り、現状では、マーケティング成熟度の高い企業ほど、ブランドの認知や信頼拡大のためにより多くの予算を投じていることになり、それがトップラインの向上に一定の影響をもたらすと捉えている傾向がある。

一方、「Middle」「Low」では「人材」が最多となった。これは、マーケティング成熟度が相対的に低い企業では、戦略・基盤構築のための人材確保や育成が求められているためではないかと考えられる。

興味深いのは、今後の重点投資領域である。「Very High」「High」の回答でも「人材」が最多となった。

AIをはじめとするテクノロジーやマーケティング手法は目まぐるしく進化しており、新しい知識やスキルを備えた人材のニーズが高まっている可能性がある。

ブランド・マーケティング投資は売り上げにどう効いているのか。大企業403社のCxO調査が示す、成果を生む投資の優先順位出所:PwCコンサルティング「ブランド・マーケティングが拓く成果への道筋―マーケティング成熟度の経年比較と投資実態から見えた重要性―」(2026年5月)
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より詳しい調査結果は、以下からダウンロード可能なレポートで確認できる。

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トップラインへの影響度が高い取り組みとは

以上が、本調査で浮き彫りになった国内企業のブランド・マーケティング投資の実情である。

では、どのような投資が、業績やKPIの改善に結び付いたのか。本調査では、この点についても回答を求めている。

ブランド・マーケティング投資は売り上げにどう効いているのか。大企業403社のCxO調査が示す、成果を生む投資の優先順位出所:PwCコンサルティング「ブランド・マーケティングが拓く成果への道筋―マーケティング成熟度の経年比較と投資実態から見えた重要性―」(2026年5月)
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ROIC(投下資本利益率)、PBR(株価純資産倍率)、顧客エンゲージメント、マーケティングROIの向上に最も寄与した投資項目は、いずれも「マーケティングやブランディングに関わるガバナンスの整備、構築」(それぞれ2.19倍、1.67倍、1.83倍、2.05倍)であった。

従業員エンゲージメントでも、影響度のランクは2位であるが、1.99倍と高い水準になった。

前述したように、ROIが十分に考慮されていないブランド・マーケティング投資へのガバナンスを強化するだけでも、さまざまなKPIを向上させられることは明らかだ。

持続的な成長を実現するための「正しい順序」

本調査の結果が示す通り、ブランド・マーケティング投資を単なるコストから「確実な成長エンジン」へと変えられるか否かは、経営層のコミットメントに懸かっている。

経営層に今求められているのは、「何に投資するか」という目先の手段を議論する前に、「なぜ成果が出ていないのか」という根本的なボトルネックを問い直す姿勢である。そして、自社のマーケティング成熟度という現在地を冷静に把握した上で、戦略的に投資を再設計しなければならない。

流行のテクノロジーや手法に流されず、データが示す事実に立ち返ること。そして、成熟度に応じた「正しい順序」で、組織再編やガバナンスといった基盤から投資を積み重ねること――。それこそが、不確実な時代において持続的な成長を実現するための、確かな道筋となる。

PwCコンサルティングは、ブランド・マーケティング戦略の実践を考えるクライアントに対して、変革を支え、収益成長を実現するために、戦略策定から実行まで一貫した支援をしていく。

【今取り組むべきアクション】

1.自社のブランド・マーケティングのレベルを把握する
単一部門に閉じた施策単体の目的/効果を、全社レベルで引き上げた際にその必要性を見極める。

2.可視化を経営判断に組み込む
ROICなどの改善につなげるため、宣伝・広告領域に閉じず、非財務領域を含めた施策全体で「投資/成果の可視化・改善」を行う正のサイクルを構築する。

3.ガバナンス体系の構築

施策運用だけでなく、その思想・戦略も含め、コーポレート、事業体の性質等も合わせることで経営資源の統合したガバナンス体系を整える。

 

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●問い合わせ先
PwCコンサルティング合同会社
https://www.pwc.com/jp/ja/