【第2回】 2009年10月22日
メディアよ、いいかげん「ダメな経済学」を捨てよ!
就活と政策、トンデモ・エコノミスト糾弾。今経済学者がすべきミクロ・マクロ政策とは
長引く経済不況を前にして、今なおはびこり続ける「ダメな経済学」の数々。短期連載・第2回目は、歯に衣着せぬ批判を通して啓蒙活動をしている経済学者・田中秀臣氏(上武大学ビジネス情報学部教授)に、なぜ、かくも「ダメ経済学」がはびこるのか、端的に今の政権が採用すべき手段は何なのか、日本の選択すべき道について語っていただいた。(聞き手・荻上チキ)
無名大学の学生は、
不景気で地獄に叩き落とされる
田中:不景気になると私たち経済学者の仕事が忙しくなるというのは、皮肉なものですね。しかし一方では、本当にうんざりしています。例えば日本銀行の金融政策の失敗など、何年も前から、内外含めて多くの経済学者たちが何度も同じことを指摘しているのに、ぜんぜん改善されないのですから。
――田中さんは現在の経済状況を、どのように見られていますか?
![]() |
| 田中秀臣 経済学者。専門は日本経済思想史、日本経済論、経済政策。上武大学ビジネス情報学部教授。早稲田大学政治経済学部卒業。同大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。率直な経済政策やエコノミスト批判で評価が高い。またサブカルチャーの分野にも業績が多い。著書は、『雇用大崩壊』(NHK出版)、『不謹慎な経済学』(講談社)、『経済政策を歴史で学ぶ』(ソフトバンククリエィティブ)、『ベン・バーナンキ』(講談社)、『経済論戦の読み方』(講談社)など多数。サブカルチャーの分野では、最近では『ペ・ドゥナ』(ユリイカ2009年10月臨時増刊号)に寄稿、またフランスのマンガ論などもある。近刊予定は、『偏差値40から良い会社に入る方法』(東洋経済新報社、11月発売予定)。 |
田中:まずは眼前で起こっていることから話しましょう。景気が悪くなってしまうと、いわゆる無名大学の学生って、もういきなり地獄に叩き落とされちゃうんですね。そして、不況の中でとても長い間就職活動をしなくちゃいけないので、みんな疲れてしまい、企業への就職をあきらめてしまう。このことが結局、フリーターとか、いわゆるパートとか家事手伝いとかを増やし、長期化してくると派遣や日雇いにしか行けないような、「失われた世代層」を作ってしまうのではないでしょうか。これは個々の若い人たちの「やる気」とかの問題ではなくて、不況のせいです。だから、マクロ経済対策、すなわち財政政策とか金融政策で対応するのが望ましいんです。
だけれど、実際に目の前で一生懸命就職活動している学生にしてみれば、そんなマクロ経済政策によって社会が変わるのを待っていられない。だから、自分の目の前にいる学生を、少しでもいい職に就かせる努力を、大学の教員も職員もそして保護者も一緒になって取り組まなくてはいけない。学生だけに任せたままではいけない、みんなでフォローしていくわけです。自分は大学で教鞭を執る身ですから、いわば就職支援が、自分にとっての小さな運動なんです。
![]() |
| 荻上チキ 評論家・編集者。1981年兵庫県生まれ。東京大学情報学環修士課程修了。テクスト論、メディア論が専門。著書は『ウェブ炎上』『ネットいじめ』など多数。 |
――個人に対して、「こんな状況でもサバイブできる術」を提供するわけですね。
田中:実は今、無名大学の就職活動に関する本を出すんです。湯浅誠さんなんかは、ワーキングプアとかホームレスの人とかの支援という社会活動をしているわけですよね。私は教師なので、就職指導っていうのがひとつの社会活動になるんです。ずっともう十何年間、ひとつの仕事として携わってきた。バブル崩壊後からアジア経済危機、構造改革の初めのころの不況、そして現在の世界同時不況、ずっと学生の就職が頭にありました。最近は、日本人の学生だけではなく、社会的にはマイノリティである外国人留学生の就職のことも考えています。考えるだけではなく学生と試行錯誤していくわけです。つかずはなれず厳しくやさしく、そして自分の教員としての職業上の使命とそれ以外のいわば経済学者としてのさきほどいった小さい運動をやっているというやる気とのバランスを考えながら。今回出すつもりなのは、僕なりにその蓄積してきたノウハウを共有するための本です。
Special Topics
バックナンバー
新着トピックス
- 『週刊ダイヤモンド』特別レポート
- 市民による市長リコールもまだできない 阿久根市政“大混乱”の責任は誰にある?
- News&Analysis
- 苦境の地方空港に追い討ちも? 火種くすぶる「ハブ空港」議論の真実
- 岸博幸のクリエイティブ国富論
- 日本のためにならない「FREE」礼賛論を疑え!
- 追跡!AtoZ ~いま一番知りたいテーマを追う!超リアルドキュメント
- 大ヒット商品が続々「特許切れ」へ。 2010年以降、もう「新薬」は生まれない!?
- チャンスを逃さない! 今どき「住活」事情 By SUUMO(スーモ)
- エコポイントがなくても人気は絶大? 想像以上に盛り上がる「エコ住宅」ブーム
- 働き盛りのビジネスマンを襲う 本当に怖い病気
- 手足のひび割れと関節痛が同時に!? 骨の変形をも引き起こす皮膚病の正体
- 献魂逸滴 極上の日本酒を求めて
- 信濃鶴――伊那谷から飛来した「鶴」は高CPで香り高き純米酒
ダイヤモンドオンラインplus 知っておきたい価値ある情報
最新の連載一覧
経済・時事
経営・戦略
スキル・キャリア
Diamond Premium 最新記事 無料会員登録すると全文が読めます
- 金融市場異論百出
- 超インフレ国はジンバブエのみ 世界が学んだ「最低限の規律」
- 週刊ダイヤモンド 企業特集
- ユニー 前村哲路社長インタビュー 「現場の自由裁量権を広げ 個店経営のウエートを高める」
- 『社会貢献』を買う人たち
- キレイになって、途上国を支援! 女性の飽くなき「美への探求」が生んだ、一石二鳥のビジネスモデル
- 山崎元のマネー経済の歩き方
- 対等合併の呪
- 野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む
- 総需要の減少をもたらした2つの要因 ──今こそ必要なデフレの経済学(5)

- 岡野工業・岡野代表エッセイ
- “神の手をもつ男”岡野雅行氏が日本の物づくりに「常識を捨て去れ」と喝!

- DOL編集部のツイッターを開始
- 最新記事の話題から編集部の日常まで、24時間つぶやきます。フォローよろしくお願いします。
Business information
この連載について
「日本はダメだ」「日本は終わった」と『絶望論』ばかりが唱えられる今、本当に私たちは将来を悲観・絶望したままでいいのか? 日本の政治・経済・社会、そして私たちがどこへ向かうのか、若手経済学者・社会学者たちが日本を語る。
アクセスランキング
- 2位
- 週刊・上杉隆
- 元秘書として鳩山邦夫氏に苦言を呈す 信念の見えない離党に意味はあるのか?
- 3位
- News&Analysis
- 日本が望みを託す宇宙開発の切り札! 「宇宙エレベーター」の知られざるシナリオ
- 4位
- China Report 中国は今
- 優秀な中国人学生を採用できなくなった日本企業
- 5位
- 評価が上がる!上司を味方にする技術
- 上司に好かれる話の聴き方、嫌われない質問の方法
Recommend 話題の記事
- China Report 中国は今
- 優秀な中国人学生を採用できなくなった日本企業
- 田中秀征 政権ウォッチ
- 鳩山首相「発言のブレ」正当化に疑問を呈す
- News&Analysis
- 日本が望みを託す宇宙開発の切り札! 「宇宙エレベーター」の知られざるシナリオ
- 山崎元のマルチスコープ
- 官民一体の海外ビジネス受注期待を怪しむ
- ミドルマネジャーのための「不機嫌な職場」改革講座
- この閉塞感はどうにもならないのか? 組織の成果を最大化する人事制度とは
- SPORTS セカンド・オピニオン
- 大リーグ球団にとっての、日本人選手の価値を考える
- 政局LIVEアナリティクス 上久保誠人
- 参院選がどう転んでも、 政界の「世代交代」加速は止められない

- 【PrimeTime】トップインタビュー
- 「サービス力は人財力と組織力の掛け算」~百瀬次生・日立電子サービス社長

- 【THEProject】プロダクトとサービス最前線
- 現実味帯びる「IFRS」。最新会計基準対応処理システムを低コストで提供
雑誌定期購読のご案内
特大号・特別定価号を含め、1年間(50冊)市価概算34,500円が、定期購読サービスをご利用いただくと25,000円(送料込み)。9,500円、約13冊分お得です。さらに3年購読なら最大49%OFF。
1冊2,000円が、通常3年購読で1,333円(送料込み)。割引率約33%、およそ12冊分もお得です。
特集によっては、品切れも発生します。定期購読なら買い逃しがありません。
年間12冊を定期購読すると、市販価格8,400円が7,150円(税・送料込み)でお得です。お近くに書店がない場合、または売り切れ等による買い逃しがなく、発売日にお手元へ送料無料でお届けします。
※別冊・臨時増刊号は含みません。
偶数月の1日発売(隔月刊)。1年購読(6冊)すると、市販価格 5,880円→4,700円(税・送料込)で、20%の割引!
※別冊・臨時増刊号は含みません。
お知らせ・ご案内
- 会員専用ページ開始のお知らせ
- 7月より一部の記事で、無料会員登録した方だけが全文を読める形に変わりました。詳細はこちらをご覧ください。






