【第4回】 2009年11月05日
経済学者が「当たり前のこと」を伝えられる日は、やってくるのか
テレビ的に受けのいい「総合知識人」が、マスメディアではいまだ好まれている。とはいえ最近では、「経済学者」としてメディアで発言する人たちの基盤も、徐々にではあるが変化している。メディアでも活躍できて、政治的影響力もあり、学術的にも正しい発言をする専門知識人の登場はあるのか。
連載4回目は、駒澤大学経済学部准教授・飯田泰之氏が経済学者はメディアとどう付き合っていくべきなのかについて、荻上チキ氏と語った(同対談は紀伊國屋書店新宿本店トークセッション「経済成長と寛容さの実現」からの抜粋・要約)。
なぜメディアは、
ニセ論者を使い続けるのか
荻上:多くの専門家の方が、メディアで専門知が拡大しないことを嘆いていますね。「なんでこんな当たり前のことが受け入れられないのだろう」と。でも、メディアはその性質上、放っておいても、自然に良貨が悪貨を駆逐することはないんですよね。スピリチュアル系の人でさえ、「真実をみなに知らしめなくては」と思っているわけですし。
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| 荻上チキ 評論家・編集者。1981年兵庫県生まれ。東京大学情報学環修士課程修了。テクスト論、メディア論が専門。著書は『ウェブ炎上』 『ネットいじめ』 |
そこで、逆に考えてみましょう。「なんでメディア関係者は、ニセ論者を使い続けるのか」。特定のタイプの人と継続的に仕事をするからには、それだけのインセンティブがあるということです。例えば番組制作系の人と番組企画の話をすると、いかに「総合知識人タイプ」が好かれるかがよく分かる。どんなトピックスにも数秒でコメントが付けられて、テレビ的なノリのジョークにも対応できる。数秒で断言してくれて、次のコーナーへの進行を邪魔せず、好感度のある人。テレビ的なプライオリティがそこに働くので、「専門的に正しいかどうか」というのは二の次なんですね。
マスメディアでは、「専門知識人」タイプよりも「総合知識人」タイプが好んで使われます。数人の専門家に話を聞きに行くより、一人で済ませたほうが時間も手間もお金もかかりませんし。そこで、「教養神話」とあいまって、文学者、民俗学者、比較文化系、思想家、俳優、精神科医といった「人間の本質」を捉えていると目されるような論者が重宝されてきた。そういう人と並んで発言できる経済学者が不在だと、メディア自体に専門知を求めにくい現状では、「ニセ議論」の流通は避けがたいという実も蓋もない状況もありますね。
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| 飯田泰之 駒澤大学経済学部准教授。1975年東京生まれ。エコノミスト。専門は経済政策、マクロ経済学。著書は『経済学思考の技術』 『歴史が教えるマネーの理論』 『ダメな議論』 |
飯田:これまでメディアでよく見かける「経済学の専門家」も「総合知識人」色の強い人が中心ですね。例えばテレビだと、佐高信さんや金子勝さんのような「一昔前のマルクス経済学」系の方。少し前の人文思想系だと、浅田彰さんや岩井克人さんのように、近代経済学が専門ではあるものの、実際の経済政策や最新の実証研究よりは、経済学基礎論みたいなものを専攻されている方。保守系だったら、佐伯啓思さんや西部邁さんのような経済思想系や思想史の人ですね。そして政治のサイドでは、なんといっても竹中平蔵さんでしょう。彼は経済学者の間では「銀行の研究所の人」というイメージで、アカデミックな方という認識はあまりないんですよね。
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