マンション再生には、建替えの他にも建物敷地売却や一棟リノベーションといった手法がある。区分所有法の改正によりさまざまな再生手法を選択しやすくなったが、三井不動産レジデンシャルマンション再生推進室の加藤喬之室長は「マンション再生の機運は高まる一方、どのような再生手法を採るべきか丁寧な比較検証が検討初期段階からより重要になると考えます」と語る。

現場で対応する同部署の能登千晶主管も「これまで建替えが進まなかったマンションでも、再度他の再生手法を含めた検討を一から行うことで再生の可能性が広がる場合があります」と受け止める。実際に検討初期段階の相談に加え、検討再開の相談も増え、複数の選択肢を検討したいという声も多い。だからこそ各マンションの特徴に応じて手法を見極め、権利者に寄り添うことが重要であると同社は考えている。

同社の「権利者に寄り添う」姿勢は、実際の再生事例に表れている。

例えば「恵比寿フラワーホーム」は、もともと借地権マンションであったが、その底地人と隣接地所有者の意向をくみながら、コンサルタント会社と共に複雑な権利関係を整理した上で、共同化による建替えを実現した好例だ。

「底地人や隣接地所有者が加わるだけでなく、区分所有者には居住用や賃貸用の他、事務所や店舗に使われている方など、さまざまな方がいらっしゃいました。立場や事情が異なる中で、一人一人にご理解いただくことが欠かせませんでした」と加藤室長は当時をそう振り返る。

能登主管は、合意形成の難しさを「マンションには、関わる方の長年の思いが詰まっており、経済的な条件だけでは決められない問題も多くあります」と語る。

建て替えたい人と可能な限り住み続けたい人の意向が分かれる場面も多々あり、「それぞれのご希望を踏まえつつ、権利者の皆さまが最良な再生手法を皆さま自身で選択することができるよう、当社はそのお手伝いをさせていただきたいと考えております」(加藤室長)。

活用範囲が広がった
建物敷地売却の手法

従来は特定行政庁による特定要除却認定が必要だった建物敷地売却が、法改正で区分所有法による多数決決議で活用可能となったことで、建替え以外の再生手法として活用範囲が広がった。

三井不動産レジデンシャルは、民間デベロッパーとして初めてマンション建替え等の円滑化に関する法律(以下、円滑化法)による敷地売却制度を活用し、「麹町三番町コンド」をはじめとして「浜松町ビジネスマンション」「麻布十番セントラルハイツ」で事業化してきた。

「マンションの特徴によって、一般的なマンション建替えよりも建物敷地売却の方が経済的なメリットを発揮する場合もあります。また、建物敷地売却後に当社が分譲マンションを新築し、その住戸を元区分所有者に優先的に購入いただくことで、実質的にマンション建替えを実現するといったケースもあります」(加藤室長)

それを実現した浜松町ビジネスマンションや麻布十番セントラルハイツでは、建物敷地売却で得られる分配金を重視する人と再入居を希望する人が混在していたため、優先分譲の提案を行い、幅広い意向に応えた。「いずれかの再生手法を選択する場合においても、住み続けたい人や資産として整理したい人など、一人一人の思いを確認しながらマンション全体にとっての最適解を皆さまが選択できるようご支援します」(能登主管)。

グループの総合力で
再生後の資産価値を維持

マンション再生では、建替え期間中の仮住まいや竣工後の管理まで含めた支援が求められる。三井不動産グループは賃貸・売買・管理の各機能が連携し、住み替えや再入居まで一体で対応できる体制を持つ。

加藤室長は再生のゴールをこう位置付ける。「建て替えること自体が目的ではありません。大切なのは、その後の生活がどうなるのか、資産価値をどう維持していくのかという点です。当社が重視しているのは、時間とともに価値を高めていく『経年優化』の考え方。建て替えて終わりではなく、住み始めてからも安心して任せていただける存在でありたいと考えています」。

建替えか、建物敷地売却か。答えは一つではない。マンションごとの状況と思いに向き合い、意思決定の過程を支えながら現実的な再生の道筋を描いていく。その積み重ねが、三井不動産レジデンシャルのマンション再生への向き合い方である。

CASE 1
隣接地と共同での建替え

恵比寿フラワーホームマンション建替え事業


「恵比寿フラワーホーム」は、借地権マンションの所有権化に加え、隣接施行敷地との共同化を実現した再生事例。区分所有者、底地権者、隣接地所有者という異なる立場の権利者が関わり、居住者の他に事務所・店舗の経営者や賃貸オーナーも含まれていた。三井不動産レジデンシャルは約10年にわたり検討初期の勉強会からコンサルタント会社と協業し合意形成、仮住まい、竣工後の管理まで一貫して支援。法改正に先駆け、複雑な権利調整を乗り越えた。恵比寿駅徒歩2分の立地で、2025年12月に「PARK COURT 恵比寿」が竣工し入居が始まっている。

 

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「経年優化」の視点で導き出す、それぞれのマンションの現実解

CASE 2
敷地売却による建替え

浜松町ビジネスマンション敷地売却事業


敷地売却制度を活用したマンション再生の事例。「浜松町ビジネスマンション」は、専有面積約12m2の小規模住戸が中心で、円滑化法の面積要件(当時は建替え後50m2以上)を満たすことが難しかった。敷地売却を選択することで、現実的な再生の道筋を示した。分配金を重視する層と再入居を希望する層が混在する中、マンションを優先的に購入できる提案で合意形成を実現。住み続けたいという思いにも応える検討プロセスを象徴している。

「経年優化」の視点で導き出す、それぞれのマンションの現実解
●問い合わせ先
三井不動産レジデンシャル株式会社
マンション再生推進部
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