東京都が太陽エネルギーの利用促進策を強化している。中でも、太陽熱利用で節約できたエネルギー量に「環境価値」をつけて金額に換算した上で、都が家庭から買い取る制度はユニークだ。公害対策でも先行したのは国ではなく地方自治体だった。東京都の取り組みには、グリーン革命のさまざまなヒントが隠されている。

 グリッドパリティという言葉がある。太陽光発電などの再生可能エネルギーの文脈では、発電コストが系統(グリッド)電力の価格以下、または等価になることを指す。これは需要家側からみて、系統電力の価格(電力料金)よりも安くなることを意味する。

 現在、日本の電力会社の電気料金は家庭向けで23円ほどだが、太陽光発電は46円(概数)ほどと言われており、コストを半分に下げないと、グリッドパリティは達成できない。

 もっとも、グリッドパリティは、一般の電気料金が高い国ほど達成しやすく、電気料金の高い日本では世界でもっとも早くグリッドパリティが達成される可能性が高いと見込まれている。

  各発電方式別の発電単価は、おおまかに、発電設備の建設費用、その設備の稼働率、燃料代といった要素で決まる。経済産業省のモデル的な試算では、石炭火力5.7円、LNG火力6.2円、石油火力10.7円、水力11.9円、原子力5.3円などの数字が例示されている。

  グリッド電力価格は、これに送電コストや、電力の需要形態や需要のタイミングなどを勘案して決められている。

  グリッドパリティが達成されない状況では、再生可能エネルギーの普及は進みづらい。そこで、世界各国で、普及のための優遇策がとられている。

 政策の手法は、A) 再生可能エネルギーで発電された電気を、グリッドよりも高値で買い取る B) 補助や減税を通じて、再生可能エネルギーの発電設備のコストを引き下げる C) AとBの両方、に大別される。

 ヨーロッパで、上記のCの手法が導入され、ドイツで太陽光、スペインで風力発電などが、この5年ほどで急速に普及した。また、アメリカや中国でも、主にBの手法が導入されて、風力発電所が急速に普及している。

 再生可能エネルギーの普及は、1) 地球温暖化問題への対処、2) 資源制約への対処として、導入されたが、近時のグローバルな経済危機から、3) 次の成長産業を振興する産業政策も目的に加わり、日本を始め世界の多くの国が、国民からも人気の高い政策として、再生可能エネルギーを政策的に後押ししている。