4月最終週の日経ヴェリタスの巻頭特集はソニーの復活であった。その記事では、さまざまな事業を抱えて各事業間でのシナジーが創出されることで、ソニーは全体としてかつての輝きを取り戻しつつあるという内容であった。その記事を読んで最初に思ったことは、「もしやコングロマリットプレミアムの議論が再燃するのか?」である。
かつて、企業はさまざまな事業を抱えることによるシナジーを追求し、コングロマリット化を目指した。そして株価にはコングロマリットプレミアムが乗せられた。しかしほどなくして、コングロマリットはむしろ悪である、という議論がなされるようになった。
その根拠は、関係性の薄い事業をたくさん抱えているだけでシナジーを生み出すことができず、経営のリソースが分断されてしまうと企業の業績が悪化し、何かの事業に特化している他社との競合に勝てない、というのが理由であった。そこで、コングロマリット企業の株価は逆にディスカウントされてしまうという、コングロマリットディスカウントなる言葉も登場した。
その後、平成金融不況の流れも受けて、日本では「選択と集中」という言葉がここ10年ほど何度も繰り返し登場し、企業はM&Aを積極的に活用することで事業の選別を行ってきた。そのような環境を経た現在において、ソニーがコングロマリット路線で成長を模索するという議論には「ん?」と思う人もいるに違いない。私もその一人であった。
コングロマリット
ディスカウントは存在しない?
一方、先日、大学院の授業で「実は最近では、コングロマリットディスカウントは存在しないかもしれないという議論が出てきています」という話があった。いろいろ検証してみると、どうもディスカウントの実態を明確に見つけることができていない、ということである。