「これも頭の痛い問題だ……」

 改正貸金業法の第3段階の施行を間近に控え、ある大手消費者金融幹部はため息をつく。

 2006年12月に公布された改正貸金業法は、激変緩和措置により4段階に分けて施行される。現在は、罰則の強化や新貸金業協会の設立などが盛り込まれた第2段階まで施行されており、第3段階の施行を待っている状況だ。その第3段階で導入される貸金業務取扱主任者資格が、意外にも頭痛のタネになっているという。

 理由は大きく2つ。

 まずは、この資格が国家資格に格上げされるため、内容が大きく変わることだ。

 これまでの貸金業務取扱主任者資格は、業者の選んだ社員が研修と簡単な理解度テストを受けて届け出れば事足りた。だがこれからは、資格試験を受けて合格し、登録が完了した主任者を事務所ごとに配置しなければならない。また、なんらかの理由で不在となれば、2週間以内に代わりの資格取得者を手当てする義務も課せられる。

 そこで頭が痛いのが試験の難易度だ。「国家資格になるため、受験者の大半が合格する今の試験とは次元が異なる。出題範囲も広がるし、難易度は格段に上がるだろう」と業界関係者は話す。今のところ、難易度が上がり合格率が下がることしかわからず、有資格者の必要数に対し、何人受験すればいいのか見当がつかない。

 そのため、ある大手消費者金融は、「事業所数を考えれば最低300人の合格者は欲しい。となれば、少なくとも2000人には受験させておかないと不安だ」と言い、また、「店長には、落ちたら降格だぞ」と檄を飛ばしている。

 次に、いまだ決まらぬ第3段階と第4段階の施行日だ。

 最終期限は区切られており、第4段階まで最大1年4ヵ月ほどあるが、施行日は前倒しされる可能性もあり不透明。そもそも合格から登録まで3ヵ月はかかるため、差し引きすれば最大で1年強しかない。

  ましてや前倒しになれば、時間はさらに短くなる。第4段階までに試験は複数回行なうとされているが、「回数すら何回あるかわからない」と諦め顔だ。

 貸し出し上限金利の引き下げや、終わりの見えない過払い金返還請求により、ただでさえ青息吐息の消費者金融業界。そこに国家資格という新たなハードルまで加わって、当分、痛みはやみそうにない。

(『週刊ダイヤモンド』編集部  藤田章夫)