駐ブルキナファソの初代大使に丸紅出身の杉浦勉氏が選ばれた。資源外交の重要性が増すなかで、商社マンへの期待は高まるが、杉浦氏の専門は実はアート。異色商社マンが選ばれたのはなぜか?

 駐ブルキナファソの初代大使に丸紅出身の杉浦勉氏(61歳)が選ばれた。杉浦氏は1971年に丸紅飯田(現丸紅)に入社し、丸紅経済研究所長などを歴任した商社マンだ。6月下旬に赴任する。

 総合商社OBの大使はこれで8人目となり、うち5人が2006年以降の就任。商社OBの存在感はここ最近特に際立っており、資源外交の重要性が増すなかで、国際的なビジネス経験や人脈が豊富な商社マンへの期待は高まる一方だ。

 昨年にも、ボツワナ大使に三井物産出身の松山良一氏が就任したばかり。ボツワナは獲得競争が激化しているレアメタルが豊富で、資源外交の切り札として松山氏が送り込まれたと話題になった。

 杉浦氏の起用も、資源大陸アフリカにおける資源政策の一環と見られる。が、じつは杉浦氏の専門はアートで、資源とはまったくの畑違い。丸紅に入社したのも「ほかの商社にはないアート部門を持っていたから」という変り種だ。

 東京大学で西洋美術史を学んだ杉浦氏は、入社後、長年アートビジネスに携わり、同社のアートキュレーターとしても活躍した異色の商社マンなのである。

 大使就任にあたっては「ブルキナファソは経済的には貧しいが、アフリカ最大級の映画祭があるなど、文化的には非常に豊かなバックグラウンドを持っている」として、「まずは文化交流から関係を構築していきたい」と語っている。

 ブルキナファソは世界最貧国の一つに数えられる。農業が主産業で、天然資源に恵まれた周辺諸国のように、経済を潤す資源の輸出がないのが一因だ。

 一見、資源外交の舞台にはなりそうもない国だが、「資金不足で開発が進んでいないだけで、資源は豊富」とブルキナファソ大使館。

 実際、1980年代には同国北部で大量のマンガンの埋蔵が確認されている。ただ北部地域への鉄道が未整備のため開発が本格化していないのが実情だ。また同国が海に面していない内陸国のため輸出港までの輸送コストもネックとなってきた。

 開発に向け、技術を持った外資の誘致活動を展開するブルキナファソのランベール・A・ウエドラオゴ臨時代理大使は「そういう意味でも、民間出身の杉浦氏の存在は大きい」として、日系企業の投資に期待を寄せる。すでに日本の財閥系商社が関心を示し、調査に乗り出しているという。

 「マンガンだけでなく、他の天然資源もあり、開発の余地は十分ある」とアピールするランベール臨時代理大使は、さらに「日本からの投資があれば、将来的には長期間の取引にもつながるだろう」と日本側のメリットを強調する。

 杉浦氏としては、まずは文化面で親交を深めつつ、資源開発でも緊密な関係を構築したいところ。異色のアート大使にかけられた期待は想像以上に大きい。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 山口圭介)