
投資家にとって、企業の配当額は投資判断に直結する大きな指標だ。一方で、配当額は企業の資本政策にも左右されるため、必ずしも企業の“実力”通りに配当が実施されるとは限らない。では、その実力に即した配当額とはいかほどなのか。今回、さまざまな経営指標から、独自に各社の「理論配当額」を推計。実際の配当額との差をランキングにした。特集『5年後の業界地図2025-2030 序列・年収・就職・株価…』の#20では、商社業界121社の理論配当額との乖離額ランキングを公開する。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)
「実力よりも配当を出している」商社は?
独自推計で判明した本当の高配当企業
投資家にとって、企業の配当額は投資判断に直結する大きな指標だ。ガバナンス改革などを背景に、株主還元を意識する企業が増えており、累進配当の導入や配当性向アップなどをアピールする事例も増加している。
一方で、配当額は企業の資本政策にも左右されるため、必ずしも企業の“実力”通りに配当が実施されるとは限らない。配当よりも成長投資を優先する企業や、内部留保の確保を重視する企業も存在するためだ。
では、それぞれの企業の配当額の“実力”とはどれくらいなのか。そこで今回、純利益やPBR(株価純資産倍率)といったさまざまな経営指標を基に、重回帰分析によって独自に各社の「理論配当額」を推計。実際の配当額がどれくらい上回っているのかを算出し、その乖離額をランキングにした。
この理論配当額は、同じような企業規模や“スペック”の企業の水準を考慮した、いわば「妥当な配当額」とも呼べるものだ。ランキングを見れば、単純な配当性向の比較だけでは分からない、企業のスペックに対して配当を多めに出しているといえる「本当の高配当企業」の存在がくっきりと浮かび上がる。
一方で、乖離額がマイナス、つまり理論値よりも配当額が低い「配当出し渋り企業」の存在も浮き彫りとなる。だが、それは裏を返せば「配当ポテンシャルの高い企業」と見ることもできる。企業の方針変更次第では、それだけ配当を増やす“余力”があると考えられるからだ。
では、理論配当額との差が大きい企業はどこなのか。今回は、幅広い卸売業を含めた商社業界121社のランキングをお届けする。
商社業界の中でも、大手総合商社は非資源分野の拡大などを背景に業績が堅調で、今後も持続的な成長が期待されている。また、2020年の“バフェットショック”なども手伝って、これまで各社が株主還元策を強化している。累進配当などの手厚い配当方針に加えて、三菱商事は1兆円もの自社株買いを発表するなど、各社が積極的な姿勢だ。
そうした結果を反映したのか、今回のランキングの上位には大手商社が軒並みランクインした。トップとなった企業は理論値を1500億円も上回る“大盤振る舞い”ぶりを発揮。果たして、激しい競り合いを制して1位となったのはどの企業か。
ランキングでは、アナリスト予想を基にした3期後の配当性向も掲載している。これを見れば、配当がどの方向で推移しそうかもチェック可能だ。
三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、丸紅、住友商事、豊田通商、双日、兼松、キヤノンマーケティングジャパン、メディパルホールディングス、マクニカホールディングス、ミスミグループ本社、岩谷産業、長瀬産業、阪和興業、サンゲツ、三菱食品……次ページで、その結果を見ていこう。