ダイヤモンド社の雑誌

8人に1人が苦しんでいる!「うつ」にまつわる24の誤解 泉谷閑示

このページを印刷

バックナンバー一覧

「ウツ」の人には余計なひとこと?―外出や運動のすすめ

――「うつ」にまつわる誤解 その(17)

 「そんなに家に閉じこもってばかりいると余計に気分がふさいじゃうでしょ。少しは外に出て気晴らししてみたら?」

 「寝転がってばかりいないで、ちょっとは身体を動かさないと気分も晴れないわよ。近所を散歩でもしたらどう?」

 「うつ」状態で療養をしていると、こういったアドバイスを周りから受けることがよくあるようです。しかし患者さんにとっては、ちょっとした外出や運動であっても、かなりの負担に感じてしまう場合が少なくありません。

 そこで今回は、「うつ」の人にとって、外出することや運動することがどのように感じられるのか考えてみましょう。

人間は「心理的なバリヤー」を張って生きている

 人間は普段、外出することなど何でもない当たり前のこととして生活していますが、ひとたび「うつ」の状態に陥ってしまうと、突然、外出することが大変な勇気を必要とするものに変化してしまいます。

 「家の中でそこそこ動けるんだったら、近所に出かけるくらい大丈夫だろう」と理屈の上では考えられるかもしれませんが、これが心理的にはそう簡単にはいかないのです。人間の行動というものを、目に見える肉体の動きだけで捉えてしまっては、こういった現象をうまく理解することはできません。

 人間は外界との接触に際して、目に見えぬバリヤーのようなものを自然に作り出していて、外界から侵害されないように防御しながら生きていると考えられます。ちょうど、免疫機能を備えることによって外界の細菌やウイルスに対する抵抗力をある程度持っているように、人間は心理的にも抵抗力と呼べるようなものを備えているわけです。

 しかし、精神的なエネルギーが低下してしまってこの心理的なバリヤーが弱体化してくると、今まで何でもなかったはずのことに次々と支障が出てくるのです。

親しい家族との接触すら負担になることも……

 「うつ」の話から少々外れるように思うかもしれませんが、ここで「ひきこもり」に陥った人の状態について考えてみましょう。

 人間の心理的バリヤーが最も弱体化したときに陥るのが、近年「ひきこもり」と呼ばれているような状態です。

 心理的バリヤーが極端に弱まると、慣れ親しんでいるはずの家族との接触すらも大きな精神的苦痛を伴うようになってしまい、自分の部屋に「ひきこもる」ようになります。これは、心理的バリヤーが張れないので、その代わりに、壁やドアで囲まれた自分の部屋という物理的なバリヤーを必要とするためだと考えられます。

おすすめ関連記事

ソーシャルブックマークへ投稿: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事をYahoo!ブックマークに投稿 この記事をBuzzurlに投稿 この記事をトピックイットに投稿 この記事をlivedoorクリップに投稿 この記事をnewsingに投稿 この記事をdel.icio.usに投稿

Special Topics

バックナンバー

Pick Up

野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む

総需要の減少をもたらした2つの要因 ──今こそ必要なデフレの経済学(5)

政府は公共事業を次々に廃止し、景気対策として定額給付金などの‥

今週の週刊ダイヤモンド ここが見どころ

あなたは保険会社に騙されている!? 「保険見直し」のバイブルが登場

今週号の特集「保険リストラ」では、保険のリストラクチャリング‥

エコカー大戦争!

現地密着取材!ロスアラモス発「スマートグリッド」革命の胎動~日米巨大プロジェクトの知られざる正体

ついに、あの国家プロジェクトが本格始動した。日本の行方を左右‥

はい上がれる人、はい上がれない人――「負け組社員」リベンジの十字路

“人生の負け組”が勢ぞろい! 負け組リベンジの名門「奇跡の屋台ラーメン」

人生の光を見失った人を、生き返らせる屋台ラーメンがある。そこ‥

最新の連載一覧

すべての連載

特集を見る

Diamond Premium 最新記事 無料会員登録すると全文が読めます

原英次郎の「強い中堅企業はここが違う!」 トップに聞く逆境の経営道
段ボール業界随一の原価計算の鬼! アースダンボールに学ぶネット販売の真髄 ~奥田敏光社長に聞く(下)
週刊ダイヤモンド 企業特集
【企業特集】ユニー 提携と差別化戦略で狙う “超”地方小売りチェーン
金融市場異論百出
「やり過ぎ」とブーイングを 浴びるFRB、正反対の日銀
週刊ダイヤモンド アーカイブズ
クリス・アンダーソンとロングテール理論をおさらい!ネットが動かしたニッチ商品の驚くべき市場規模
『週刊ダイヤモンド』特別レポート
日本のテレビ業界が復活するには 「キー局の合従連衡」が待ったなし
起業人
ネット通販専業でアパレル業界に風穴! 「七転び八起き」で若い女性の心をつかむ 夢展望社長 岡 隆宏
山崎元のマネー経済の歩き方
成長のための資産運用の落とし穴
「測るための標準」を考える
紀元前2500年頃に造られたピラミッドの建築に当たっては、常に同じサイズの石を…
DOL編集部のツイッターを開始
最新記事の話題から編集部の日常まで、24時間つぶやきます。フォローよろしくお願いします。

著者プロフィール

泉谷閑示
(精神科医)

1962年秋田県生まれ。東北大学医学部卒。東京医科歯科大学医学部付属病院医員、(財)神経研究所付属晴和病院医員、新宿サザンスクエアクリニック院長等を経て、現在、精神療法を専門とする泉谷クリニック院長。著書に『「普通がいい」という病』(講談社現代新書)と最新刊の『「私」を生きるための言葉』(研究社)がある。
「泉谷クリニック」ホームページ

この連載について

いまや8人に1人がかかっているといわれる現代病「うつ」。これだけ蔓延しているにもかかわらず、この病気に対する誤解はまだまだ多い。多数の患者と向き合ってきた精神科医が、その誤解を1つずつひも解いていく。

Recommend 話題の記事

経済ジャーナリスト 町田徹の“眼”
NTTグループには大誤算? 原口総務相の経営形態見直し指示
News&Analysis
やはり“持ち直し局面”入りは確実? データと巷説に見る「住宅の本当の買い時」
週刊ダイヤモンド 企業特集
【企業特集】ユニー 提携と差別化戦略で狙う “超”地方小売りチェーン
IT&Business
サイバー攻撃の増加で注目度急上昇! マカフィーが誇るセキュリティ技術の中身
岸博幸のクリエイティブ国富論
米金融関係者が鳩山政権に抱く4つの懸念と違和感
週刊・上杉隆
ついに歴代首相・外相を国会召致か? 「核密約」を闇に葬った政・官・メディアの重い責任
DOL特別レポート
増税でも解決できない地方財政の危機! 民主党は参院選前にビジョンを示せ ――宮脇敦・北海道大学教授インタビュー
News&Analysis
日本を逆転しても意識は“子ども”のまま? 中国が世界にバラまく「強欲社会主義」
田中秀征 政権ウォッチ
鳩山首相は度を越えた「偽善者」か? “上から目線”の政治が不信感を強める
働き盛りのビジネスマンを襲う 本当に怖い病気
突然、妻を襲う原因不明の頭痛! 男性も他人事ではない更年期障害の実態

雑誌定期購読のご案内


詳しくはこちら

特大号・特別定価号を含め、1年間(50冊)市価概算34,500円が、定期購読サービスをご利用いただくと25,000円(送料込み)。9,500円、約13冊分お得です。さらに3年購読なら最大49%OFF。


詳しくはこちら

1冊2,000円が、通常3年購読で1,333円(送料込み)。割引率約33%、およそ12冊分もお得です。
特集によっては、品切れも発生します。定期購読なら買い逃しがありません。


詳しくはこちら

年間12冊を定期購読すると、市販価格8,400円が7,150円(税・送料込み)でお得です。お近くに書店がない場合、または売り切れ等による買い逃しがなく、発売日にお手元へ送料無料でお届けします。
※別冊・臨時増刊号は含みません。


詳しくはこちら

偶数月の1日発売(隔月刊)。1年購読(6冊)すると、市販価格 5,880円→4,700円(税・送料込)で、20%の割引!
※別冊・臨時増刊号は含みません。

お知らせ・ご案内

会員専用ページ開始のお知らせ
7月より一部の記事で、無料会員登録した方だけが全文を読める形に変わりました。詳細はこちらをご覧ください。