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現代人に突きつけられた「うつ」というメッセージを読み解く

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「恵まれているはずなのに、何を悩むことがあるんだ?」
――世代間ディスコミュニケーションの背景にあるもの

  「うつ」についてマスメディアがとり上げる機会も増え、社会的にもメンタルヘルスへの意識が高まってきて、研修や啓蒙活動が活発になされるようになりました。しかし、依然として「うつ」に陥った人を取り巻く人間的環境は、まだまだ十分なものであるとは言えません。

 とりわけ、上司と部下、親と子などの基本的価値観の相違は、世代間のディスコミュニケーションを生み、「うつ」についての無理解が生まれる大きな原因となっています。

――何不自由なく恵まれているはずなのに、何を悩むことがあるんだ?

――自分たちの若い頃は、「自分らしく」なんて考える暇はなかった。どんなことでもひたすら続けていけば、それなりに何とかなるものだ。

――今の人たちは贅沢病で、精神的に弱くなっているんじゃないのか?

――まずはメシが食えなければ何も始まらないだろう。どうしていつまでも青臭いことで悩んでいるんだ?


 このような価値観を持つ上の世代から見れば、現代の若い世代の「うつ」の状態や引きこもり、ニートなどの状態は、まったく理解不能ということになるでしょう。

 今回は、このような世代間ディスコミュニケーションの背景に何があるのかということを、掘り下げて考えてみたいと思います。

「生きる意味」を問う人々

 「うつ」の状態に陥ると、人は、それまであまり意識せずにいた「生きる意味」を問わざるを得なくなります。

――生きる意味とは何なのか?

――自分らしく生きるとはどう生きることなのか?

――なぜ生きなければならないのか?

――なぜ仕事をしなければならないのか?

 このような実存的な問いは、本人にとって容易に答えの見つからない厄介なものであると同時に、それを投げかけられた周囲の人間にとっても、答えに窮するような性質のものでしょう。

 多くの人は、深く考えたことのない問いを突きつけられた際に、狼狽を隠すように「それは考え過ぎだよ」「そんなことを考えている暇があったら、もっと仕事(勉強)をしろ」「気分転換でもしたほうがいいんじゃないか」「病気だからそんなこと考えるんだ」などとはぐらかしてしまったり、問い自体を否定してしまったりします。

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著者プロフィール

泉谷閑示
(精神科医)

1962年秋田県生まれ。東北大学医学部卒。東京医科歯科大学医学部付属病院医員、(財)神経研究所付属晴和病院医員、新宿サザンスクエアクリニック院長等を経て、現在、精神療法を専門とする泉谷クリニック院長。著書に『「普通がいい」という病』(講談社現代新書)と最新刊の『「私」を生きるための言葉』(研究社)がある。
「泉谷クリニック」ホームページ

この連載について

今日急増している「うつ」は、もはや特定の個人の問題と捉えるだけでは十分ではない。現代人が知らず知らずに翻弄されているものの正体は何か。前連載に引き続き、気鋭の精神科医が豊富な臨床経験をもとに読み解く。

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