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父と娘の就活日誌

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「働く動機」はシンプルでいい

■4月11日

 娘は金融機関B社から4月4日に内々定をもらった。しかし、祖母が大きな手術をして私と妻が介護に取り組む様子を見て、地元で働ける会社(エネルギー関係や地銀)に絞って就活を続けていた。

 またB社の内定が決まったので、もう落ち着いたのかと思ったが、娘の顔はあまり晴れ晴れとしたものではなかった。それはまだ就活を続けている後ろめたさもあったが、「自分で決めていない」という物足りなさもあるようにみえた。

 人生の大きなイベントである就職や結婚でさえ、強い意志で選ぶのではなく、自分ではどうにもならない事柄に支配されていることは親の世代になって理解できるのだろう。

 娘によると、この時点で大学のゼミの友人は、ほぼ半数近くが内々定を取得した。機械メーカー、コンピューター関連、大手商社、メガバンクなどである。出足が遅いメーカーを志望している学生は、これからが面接の本番だそうだ。メガバンクを始め、金融関係を回っている学生は、かなり決着がつきつつある。

 内々定が決まった同じ大学の男子学生との会話である。

「もう行くところは決まったの?」

友人「一応、信託銀行とコンサル会社から内々定をもらった」

「私は多分金融機関のB社になると思うけど。A君はどちらの会社にするの?」

友人「まだ迷っているんだ。信託のリクルーターに他社のことをポロっと話したら、『この時期に廻るなんて約束違反だ』って相当言われたよ。ゼミの先輩には、そういうことを話すお前が悪いって言われたね」

「どうして、信託銀行とコンサル会社にしたの?」

友人「個人に役に立つというか、専門性の高い仕事がしたいんだ。信託は個人の財産管理や相続の相談、不動産などの部門もあるからね。将来、独立したいと考えているので、就活が終わると、行政書士の試験も受けるつもりだ」(彼は、経済学部なのに、民法や商法の授業の単位も取っている)

「私は仕事で何かやりたいことなんてないの。とにかく働いて、経済的にも精神的にも自立したい気持ちが強いわ」

友人「実は、僕もやりたいことを無理に作り上げている気持ちもあるよ。だから迷うんだ」

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著者プロフィール

楠木新
(「こころの定年」評論家)

大手金融機関勤務のかたわら、企業など組織を離れて「いい顔」で活躍している中高年に対するインタビューを重ねている。2007年3月より朝日新聞be(土曜版)でコラム「こころの定年」を連載中。著書に『ビジネスマン「うつ」からの脱出』(創元社刊)がある。

この連載について

働く価値観が多様化する中、超売り手市場の環境下で、大学生はどのように企業選択をしていくのか。就職活動に臨む大学3年生の娘と父とのリアルな対話を通して、実状に迫る。

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